記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/20
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
ユーイング肉腫は骨にできる「がん」の一種であり、骨や筋肉に痛みや腫れが起こる病気です。子供から若者に多いとされ、症状が遅く進行している場合は目立った症状が出ないことも多いといわれています。今回はユーイング肉腫の基礎知識をまとめたので参考にしてください。
ユーイング肉腫は骨にできるがん(悪性骨腫瘍)で、まれな病気です。小児から10代の若者に多く、患者の90%が5~30歳といわれています。
骨のがんには、骨自体にできるがんと他の臓器のがんが骨に転移するものがあり、ユーイング肉腫は骨自体にできるがんのひとつです。もっとも多いのが「骨肉腫」ですが、これは骨にできた悪性の腫瘍が骨に変化するもので、膝や肩などの関節まわりに発症します。
一方、ユーイング肉腫は骨の組織を破壊し骨の外に転移します。関節まわりだけでなく、離れた骨盤や脊椎、筋肉にもできる場合があります。原因についてはまだわかっていませんが、最近では胎児期の染色体異常が発見されています。
ケガもないのにときどき骨や筋肉に強い痛みを感じる、腫れるなどの症状のほか、発熱や貧血を起こす場合もあります。発症する場所によってさまざまな症状があり、足を動かしにくくなったり、排尿に支障がでたり、胸であれば「胸膜浸潤」を合併することもあります。
悪化すると痛みが増し、高熱、めまい、吐き気などを起こすようになり、骨が弱って折れやすくなったり、白血球が増加して腫れも大きくなって神経がうずくように痛みます。悪寒や体力の著しい低下などもみられます。
痛みは進行が速いほど強く、進行が遅い場合には「骨髄炎」や「成長通」などと間違われ見過ごされる場合があります。
まず画像検査により、腫瘍の大きさや位置、広がりなどを診ます。X線(レントゲン)やCTスキャンなどの画像診断を行いますが、骨組織が邪魔して発見しにくいことも多く、その場合には磁力(電磁波)を用いた「MRI」検査により詳しく調べます。
放射性物質を注射し病巣を探す「骨シンチグラフィ」、がん細胞の活動性を確認する「PET検査」のほか、骨髄を採取して調べる「骨髄検査」が行われることもあります。
病巣を部分的に採取して組織を詳しく検査(生検)し、確定診断をしたうえで治療方針を決めて行くことになります。最近では遺伝子診断も実施され始めています。
治療は、化学療法(抗がん剤治療)、手術治療、放射線治療の大きく3つに分けられ、これらを組み合わせて行われます。臓器を残しつつ後遺症を最小限にするための「集学的治療」で、複数の科の医師が連携し進めて行くことになります。
まず化学療法により小さな転移などを治療しがんの広がりを小さくします。その後、切除手術、放射線治療で、腫瘍を治療していきます。比較的放射線治療が効きやすい場合や、背骨や骨盤のような手術が難しい場合、肺などに転移している場合には、手術の範囲などを考慮しながら抗がん剤を調整し、組み合わせて治療を進めていきます。
治療終了後も経過観察による体調の変化や再発の確認が必要です。
骨のがんはまれに起こるものですが、若い世代にみられ症状も痛みや腫れ程度でわかりにくい面があります。けがをしたわけでもないのに痛みや腫れが続く場合は、疑問を抱きながら問題ないと判断したりせず、早目に整形外科を受診するようにしましょう。