記事監修医師
前田 裕斗 先生
2017/11/16 記事改定日: 2018/3/26
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記事監修医師
前田 裕斗 先生
妊娠中に貧血を経験したことのある妊婦さんは少なくないでしょう。今回は妊娠中の貧血について、お腹の赤ちゃんに対する影響にもふれながら解説していきます。改善に役立つおすすめレシピも紹介するので、参考にしてください。
心臓から送り出された血液は、酸素や栄養分だけでなく、ホルモンや熱などを運搬する重要な役割を担っています。しかし、貧血の場合は、酸素を運ぶ血色素が不足するため、全身に酸素がうまく行き渡らなくなります。これを補うために心臓がいっそう動くことで、動悸やめまい、息切れなどの症状が見られるようになります。身体もなんとなくだるくなったり、疲れやすくなったりします。
貧血の程度にもよりますが、妊婦自身だけでなくお腹の赤ちゃんへも影響が出てくるケースがあります。赤ちゃんは、母親の血液が運ぶ酸素を胎盤やへその緒を通して吸収・呼吸をしています。そのため、妊婦が強い貧血になれば、赤ちゃんが酸素不足に陥るリスクがあります。貧血によって胎児の発育に影響がでる可能性もあります。
ただし、妊娠中期以降の軽度な貧血では、低出生体重児となる可能性はそれほど高くありません。
貧血とは、血液の中にある赤血球や血色素が正常より少なくなっている状態を指します。中でも妊婦さんによく見られるのは、鉄欠乏性貧血です。
妊娠中の女性が鉄欠乏性貧血を起こす理由として、お腹にいる赤ちゃんを育てるために、鉄需要が増加することが挙げられます。これは赤ちゃんや胎盤などに供給するための血液が必要になる上に、分娩や授乳に向けて備えるためです。年子を出産する場合は、より鉄欠乏性貧血になりやすいといわれているため、注意しましょう。
妊婦健診では妊娠初期、中期、後期に血液検査を行いますが、妊娠中に循環血液量は徐々に増加し中期に最低値となります。妊娠初期で7.0mg、妊娠中期・後期では17.5mgの鉄を、日々摂取することが望ましいですが、その摂取量をなかなか達成できない妊婦さんも少なくありません。
妊娠後期には、出産に備えて体液量が増加します。初期の頃より約2.5キロ分増えるといわれていますが、これは純粋に水分のみが増えるだけで、血液に含まれる白血球や赤血球などが増えるわけではありません。ですから、血液が薄まった状態となって相対的に貧血になりやすくなります。
また、妊娠後期にはお腹の赤ちゃんは急速な成長を遂げます。赤ちゃんの成長には鉄分が必須であり、より多くの鉄分が赤ちゃんに渡されることでお母さんの鉄分不足が加速して貧血になりやすい状態となるのです。
妊娠期は、母体の健康と赤ちゃんの発育のために、特に食生活には気をつけて栄養素をしっかり摂ることが大切です。赤身の肉や魚などの鉄を含む動物性食品を、積極的に取り入れましょう。日本人が食事で摂取できる鉄のおよそ85%以上が、吸収率の低い非ヘム鉄であるといわれています。非ヘム鉄の吸収率は、たんぱく質やビタミンCの摂取量が増えると高まることがわかっているため、食品の組み合わせ方にも気をつけることをおすすめします。
妊婦さんが貧血になると、病院で鉄剤が処方されることが多いです。しかし、鉄剤は吐き気や便秘などの副作用もあるため、なるべくなら飲みたくないという妊婦さんも多いですよね。鉄分は多くの食材に含まれていますから、日ごろからそれらを意識的に摂るようにすれば貧血対策につながります。そこで、貧血予防や改善に役立つおススメレシピをご紹介します。
ひじきには鉄分がたっぷり含まれています。低カロリーなのでおかずの追加の一品に加えても安心です。
新人や油揚げ、ひじきなどの具材を油で炒め、酒や醤油、みりん、砂糖などでお好みの味付けをし、煮汁がなくなるまで煮詰めたら完成です。
ほうれん草にも鉄分がたっぷり含まれています。お浸しにすると低カロリーで、さっぱり味。つわりがひどい時にも食べやすいおススメの一品です。
ほうれん草はしっかりとあく抜きをします。あくがある状態だと尿管結石などを生じやすくなりますから注意しましょう。
あく抜きをしたほうれん草を適当な大きさにカットして、めんつゆや醤油でお好みの味付けにすれば完成です。鰹節をかけると、カルシウムも摂ることができますね。
牛肉とピーマンの中華風炒めです。牛肉にもピーマンにも鉄分が豊富に含まれていますから、貧血の強い味方です。メインの一品で貧血対策を行うことができます。
牛肉を醤油、お酒で味付けして片栗粉をまぶしたものをピーマンと一緒に炒めるだけで完成です。ピーマンの量を増やすとカロリーダウンになります。
妊娠中の貧血は、少しの工夫をするだけで対策が可能です。日頃の食生活に気を配りながら、赤ちゃんに必要な酸素や栄養素を与えてあげられるようにしましょう。