記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/27 記事改定日: 2019/5/14
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
自己免疫性溶血性貧血は、赤血球の破壊が早く進行する貧血の一種です。今回の記事ではこの自己免疫性溶血性貧血について、どのような症状があり、どんな治療をするのかご紹介します。
人間の体には、ウイルスなどの異物から自身の体を守るための自己抗体と呼ばれる成分があります。
自己免疫性溶血性貧血とは、その自己抗体が、血液中の赤血球を異物と判断してしまい、異常な早さで赤血球を破壊してしまうために起こる貧血のことです。
自己免疫性溶血性貧血のうち、体温と同じぐらいの温度で抗体の結合が強くなるものを温式自己免疫性溶血性貧血、体温以下の温度で抗体の結合が強くなるものを冷式自己免疫性溶血性貧血と呼びます。
主な症状は貧血で、倦怠感や動悸、めまいや息切れ、頭痛などが起こります。黄疸が見られたり、脾臓が腫れたり、胆石症を合併する場合もあります。
また、赤血球が急激に破壊されると腰痛や濃い色の尿が見られることもあります。
自己免疫性溶血性貧血の場合、無害なはずの赤血球に自己抗体ができることまでは分かっていますが、なぜそのような現象が起こるのかははっきりしていません。
ただ、膠原病などの自己免疫疾患や悪性腫瘍を患っている人に見られることがあり、マイコプラズマ肺炎に罹患した場合に冷式自己免疫性溶血性貧血が見られる場合もあることから、自己免疫に何らかの障害が発生した際や、何らかの感染症から引き起こされるのではないかと言われています。
そのほか、抗生物質や鎮痛薬などの薬も、原因の可能性があるもののひとつです。なお、いまのところ遺伝性ではないと考えられています。
自己免疫性溶血性貧血の治療は、第一選択としてステロイド剤による薬物療法が行われます。ステロイドには過剰な免疫反応を抑える効果があるため、軽症な場合には症状の改善が期待できるのです。
しかし、ステロイド剤のみでは症状を十分に抑えられないケースや、長期間にわたるステロイド剤の使用によって様々な副作用を生じるケースもあります。そのような場合には、溶血を行う臓器である脾臓の摘出や免疫反応をさらに強力に抑えるために免疫抑制剤を使用が検討されます。
副腎皮質ステロイドホルモン薬を服薬する場合、医師が指示した通りに服薬することが重要です。症状が軽減したからと言って、自己判断で服薬を辞めたり、量を減らしたりしないよう注意してください。
また、ストレスにより症状が悪化する場合もあるため、治療中はできるだけストレスのない生活を送るよう心がけましょう。感染症にかからないよう、手洗いやうがいを欠かさないことも重要です。
なお、冷式自己免疫性溶血性貧血の治療の場合、体を温かく保つことも不可欠です。服装や室温などに注意しましょう。手足や顔も冷えることがないよう注意が必要です。治療により症状が治まれば、正常な生活が送れることもあります。
一口に貧血と言っても、その原因は様々です。自己判断で放置しておくと、重大な疾患を見逃してしまう可能性もあります。貧血の症状があれば、病院を受診するようにしましょう。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。