記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/29
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
肝硬変などの重度の肝疾患をお持ちの方には、特に注意していただきたい症状があります。それは「肝性昏睡」です。今回は、肝性昏睡の特徴的な症状や治療法、予防法などをお伝えしていきます。
肝臓は身体の中でも主要な代謝を司る器官です。肝疾患によって肝臓がうまく機能しなくなると、さまざまな代謝産物が体内に溜まっていき、神経有毒物質が原因で、あるいは神経機能に必要とされる物質が欠乏することが原因で、神経症状が現われるようになります。これを肝性脳症と言います。
肝性昏睡は、自覚症状のない軽いものから昏睡に至る重度のものまでさまざまです。日頃から予防に努めると共に、発症した場合には適切な治療を行うことが欠かせません。
肝性脳症の症状は、症状の出方に個人差はあるものの、以下の5段階に分けられます。
まず第1段階では、睡眠リズムの乱れ、過度の幸福感、抑うつといった症状が出ます。ただしこの段階では、気づかれないことも多いです。しかし第2段階になると、時間や場所が分からなくなったり、異常行動を取ったりと認知症と似た行動がみられるようになります。また、腕を伸ばすと震える「羽ばたき振戦」も第2段階の特徴のひとつです。第3段階に進むと眠っている時間が長くなり、起きているときには興奮したりパニックを起こしたりします。そして第4段階に進むと、完全な意識の消失・昏睡が始まります。この第4段階では、痛みや刺激には反応しますが、第5段階まで進むと痛みにも刺激にも反応しなくなります。
肝性脳症になると、アンモニアや低級脂肪酸・メルカプタンなどの物質が、肝臓で十分に解毒されること無く血液中に増加しています。肝性昏睡はこれらの物質が脳内に移行していく中で悪化していくため、そうなる前に下剤で便通を良くして、アンモニアが作られるのを抑制するのが主な治療法となります。また下剤のほかに、血中アンモニアを低下させる作用のある合成二糖類製剤や、タンパク質やアミノ酸バランスを整えてくれるBCAA製剤なども処方されます。
治療法の一つとして食事療法もあります。高たんぱく・高脂肪の食事は控え、食物繊維をしっかり摂ることで便通をよくしましょう。また塩分は控えめにし、しっかりお水も飲みましょう。お酒は控えることが望ましいです。
なお、そもそも肝性脳症は肝疾患が元で引き起こされる症状なので、お酒の飲みすぎや食生活の乱れ・便秘・肥満・ストレス・睡眠不足などには注意が必要です。
肝性脳症は初期段階ではなかなか気づきにくいものの、進行すると昏睡状態に陥ってしまう危険な症状です。深刻な事態を防ぐために、患者さん本人だけでなくご家族など周囲の方も、肝性脳症の特徴的な症状を知っておくことが大切です。