記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/29 記事改定日: 2019/1/9
記事改定回数:2回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
心不全とは、何らかの原因で心臓のポンプ機能が作用しなくなり、全身に血液が送れなくなった状態のことです。
動悸や息切れなど、症状は様々ありますが、どのような症状が出ると入院は必要になるのでしょうか。この記事では、心不全の症状や原因、治療などの基礎知識を紹介していきます。
心不全とは、心臓の働きが低下して、全身に必要な血液量を送ることができなくなった状態のことをいいます。
人間が生きていくためには、血液によって酸素と栄養を体の各部分に運ぶ必要があります。この血液を全身に循環させる、非常に重要なポンプの役割を果たしているのが心臓です。
心臓に何らかの問題が起こり、このポンプ機能が低下したり、心臓以外の原因によって心臓の働きが不十分になったりすると、心臓だけではなく全身にさまざまな症状が現れます。こうした状態のことを心不全と呼ぶのです。
心不全の原因は大きく分けて、心臓に過度な負担がかかって心臓が弱ってしまうことと、心臓に関係した病気によって心臓の筋肉が障害されて機能が低下することの2つのパターンがあります。
心臓に過度な負担がかかる病気としては、高血圧や不整脈、貧血、甲状腺機能亢進症などの頻脈を引き起こすものが挙げられます。これらの病気は、心臓に過剰な圧がかかってり、通常よりも多く働きすぎることで心臓が疲弊し機能が低下するものです。
一方、心臓の筋肉が障害される病気には、狭心症や心筋梗塞、弁膜症、心筋炎などが挙げられます。心筋炎はウイルス感染が原因となることが多く初期ではほとんど症状がないため注意が必要です。
心不全はさまざまな原因によって発症しますが、多く見られるものは高血圧です。高血圧の状態は、心臓が血液を送り出す力がより大きくなります。このため、高血圧の状態が長く続くと心臓に過度な負担がかかって、徐々に機能が低下して心不全を発症する可能性があるのです。
このため、高血圧の原因となる喫煙や過度な飲酒は心不全の発症リスクになると考えられます。心不全の予防や治療のためにも、適切な飲酒量を守り、喫煙習慣がある人は禁煙を試みるようにしましょう。
心不全の代表的な自覚症状には、動悸や息切れ、呼吸困難、むくみがあります。
初期のうちは、坂道を上ったり、重いものを持ったりすると、動悸や息切れが起こります。症状が進行すると平地を歩いていても息苦しくなったり、仰向けになって寝たときに咳が出たりといった症状が出てくるようになります。
さらに進行すると、夜、息苦しさで寝られなくなったり、喘息(ぜんそく:気管支喘息)のようにヒュウヒュウと音が出たりします。この状態までいくと、すぐにでも入院治療を始める必要がなります。
心不全は全身に様々な症状が生じますが、初期症状としては、動悸や息切れ、足のむくみなどが引き起こされることが多いです。また、夜間横になると息苦しさが現れ、咳が出ることがあります。
とくに、なかなか治らない夜間の咳は風邪による症状と思われがちで、長く市販の風邪薬を服用し、適切な検査や治療が遅れることも問題となります。
これらの症状は、心臓の機能が低下することによって全身にいきわたる血液量が減少することで酸欠状態となり、横になると心臓に血液がうっ滞し、肺に水が溜まりやすくなるために呼吸困難や咳などの症状が現れるのです。
なかなか治らない夜間の咳やむくみ、動悸や息切れは心不全のサインの可能性があります。早めに病院を受診して適切な検査・治療を受けることをおすすめします。
心不全の治療法は多岐に渡りますが、ここでは代表的な治療法を紹介します。
治療の原則は、心臓の働きを低下させたもともとの原因をはっきりさせ、その原因となる病気を治療することです。
高血圧や糖尿病、高脂血症は心臓そのものに負担をかけたり、心臓を取り巻く環境に悪影響を及ぼすため、しっかりとコントロールを行います。狭心症や心筋梗塞が原因であれば、冠動脈バイパス手術などの治療を行います。
心不全には、状態が急激に悪化する急性心不全と、状態が安定している慢性心不全があります。
急性心不全では入院して安静を保ち、酸素吸入や一時的に心臓の働きを高める薬を用いるなどの治療を行います。慢性心不全では、体内の余分な水分を取り除く利尿薬や、心臓の働きを手助けするジギタリス製剤を用いるのが一般的です。
加えて、長期的な予防のために、心臓の負担を軽くして心不全の悪化を防ぐ薬も用いられます。
低下した心臓のポンプ力を補うために、ペースメーカーを用いて治療を行う場合もあります。「両心室ペーシング」という方法で心臓のポンプ力をアップし、ぎこちない心臓の動きを正常にします。
上記のほかにも、不整脈が認められる場合には植え込み型除細動器(ICD)を用いたり、ポンプ機能の低下が激しい場合には心臓を小さくする手術が行われたりと、状態に応じた治療が検討されます。
心不全は、心臓にダメージが加わって機能が低下する病気ですが、一度傷害された心臓の組織は残念ながら元の状態に戻る可能性は極めて低いと言えます。
一度心不全を発症したら、それ以上症状が悪化しないように生活習慣を見直す必要があります。また、心不全の原因と考えられる病気がある場合には、その病気の根本的な治療も必要です。
心不全の治療は利尿薬などを用いて、心不全による症状を改善することが主体となりますが、治療の上で最も大切なのは、心臓に過度な負担がかからないように心がけることです。
心不全は、原因となる病気によっては深刻な症状を招くこともあります。心不全が疑われる症状を感じた場合には、早めに病院を受診してください。
そして、一度障害が起こった心臓の機能が元通りになることはほぼありません。心不全の治療は、QOL(生活の質)の向上のために行われます。医師の指導に従い、心不全とうまく付き合っていくことを心がけましょう。
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