記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/1 記事改定日: 2019/3/13
記事改定回数:2回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
精巣上体炎はかつて副睾丸炎といわれた男性特有の病気で、痛みが太ももまで広がることがあります。早期に適切な治療を開始すれば1~2週間程度で完治しますが、放置して悪化すると手術が必要になる病気です。この記事では精巣上体炎について解説しています。
精巣上体炎は精巣上体で細菌が繁殖し、炎症することにより起こる病気です。
痛みや腫れ、高熱を伴い、殆どの場合は片側の睾丸で起こりますが、両側で起こった場合は不妊症の原因となり得る可能性があります。
精巣上体炎は、前立腺炎や膀胱炎、精嚢炎、尿道炎などの炎症が起きたとき、細菌が精巣上体に感染することによって起こります。稀に尿道カテーテルの挿入で症状が現れることもあります。
原因菌となるのは大腸菌やクラミジア、淋菌などです。クラミジアや淋菌は性感染症の原因菌であり、若い人の精巣上体炎はクラミジアや淋菌が原因になることが多いといわれています。
精巣上体炎が発症すると、陰囊の痛みやしこり、腫れなどの症状が現れます。排尿時に痛みを伴い、悪寒や高熱が現れ、陰嚢に膿がたまってしまうこともあります。
また、炎症が全体に広がっている場合には、下腹部や太ももにまで痛みが発生し、歩けなくなってしまうこともあります。
精巣上体炎は、発症初期の急性精巣上体炎の段階では陰嚢の痛みや腫れ、38度以上の高熱などの強い症状が現れます。また、重症な場合には炎症が腹腔内にまで波及して、腹痛や歩行困難などの症状が生じることも珍しくありません。
一方、炎症が慢性化して慢性精巣上体炎に進行すると、痛みや発熱などの炎症に特徴的な症状は見られなくなるのが特徴です。
陰嚢にしこりが触れることもありますが、自覚症状はほとんどありません。しかし、炎症が長く続くことで、精巣上体周囲の精路(精子の通り道)に癒着や閉塞が生じ、無精子症を引き起こすことがあります。
精巣上体炎では、陰嚢の腫れ具合や発熱などを確認し、尿検査で尿中の細菌や白血球の状態を調査し、血液検査で全身にどの程度影響を及ぼしているか調べます。
治療では主に抗生物質が用いられ、睾丸の腫れが酷いときには睾丸を冷すように指示される場合もあります。
一般的には1週間から2週間程度で回復しますが、陰嚢に膿が溜まってしまった場合は切開が必要になります。また、ひどいときには精巣上体を取り出さなくてはいけなくなってしまうこともあります。
精巣上体炎は基本的には抗生物質を服用すれば治る病気です。しかし、抗生物質が効かない場合や症状が極めて強い場合には精巣上体自体を摘出する手術が必要になることがあります。
手術の方法は重症度によって異なりますが、炎症が強く膿の塊ができているような場合には、陰嚢を切開し、膿の塊と共に精巣上体を摘出します。精巣上体の周囲には精巣の血流を送る重要な血管が走行しているため、慎重な摘出が必要となります。
また、炎症が慢性化している場合は精巣上体がこれらの血管や精巣の組織と癒着しているケースもありますので、慎重な剥離が必要です。
精巣上体炎のほとんどは片側の睾丸のみに起こりますが、両側で症状が現れると男性不妊の原因になる可能性もあります。精巣上体炎は症状が悪化すると陰嚢を切開しなければいけなくなることもある病気です。陰嚢の痛みの原因は軽いものから重いものまで様々あります。何か症状があるときには、すぐに病院で検査を受けるようにしましょう。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。