記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/1 記事改定日: 2020/5/18
記事改定回数:2回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
男性特有の臓器である前立腺。前立腺の主な病気には前立腺がんと前立腺肥大などがありますが、前立腺肥大が前立腺がんに移行することはあるのでしょうか。この記事では前立腺がんの原因や症状、検査と治療法を紹介します。併せて、性行為や前立腺肥大は前立腺がんに関連があるのか解説していきます。
前立腺がんの原因は、加齢、家族歴(遺伝)、喫煙、肥満、食生活、男性ホルモンなどが挙げられていますが、まだはっきりしたことはわかっていません。
前立腺肥大症の原因も同様です。男性ホルモンや女性ホルモンの性ホルモンの変化が前立腺の肥大に関係していると考えられていますが、完全に立証されたわけではありません。
前立腺がんは、50歳頃から発症者が増え始め、年齢を重ねるごとに発症率が上昇していきます。
1年間で新たに前立腺がんになる男性は10万人中100人程度とされていますが、80歳以上では520人にもなり、およそ190人に1人が前立腺がんを発症するとのデータもあります。
前立腺肥大症は30代頃から発症者が増え始め、年齢を重ねるごとに発症者は増加。特に、50歳以降では発症者が急増し、50歳で30%、60歳で60%の方が前立腺肥大症を発症しているとのデータもあります。
射精や性行為が前立腺がんの原因になるという有効なデータはありません。つまり射精や性行為が多いからといって、前立腺がんの発症と結びつけて心配する必要はないのです。
一方、アメリカの研究では「射精を多くしている男性の方が前立腺がんのリスクが低い」という報告がされました。しかしこの研究結果は、射精回数と前立腺がんの因果関係を証明するものではないため、前立腺がん予防のために射精や性行為を推奨するものではありません。
前立腺は男性特有の臓器で、膀胱の下、直腸の前にあります。前立腺には精液の一部を作る働きを持ち、形は栗の実に似ています。
前立腺の病気で代表的なものが「前立腺がん」と「前立腺肥大症」です。
前立腺には尿道近くの内腺と外側の外腺があり、がんの腫瘍は外腺の方に出来ることが多いです。前立腺がんは転移することがあります。
多くは無症状ですが、進行すると血尿や排尿時の痛み、尿が出にくいなどの症状があらわれます。ただし、早期の前立腺がんで排尿障害が生じることはまれです。
前立腺がんは比較的ゆっくり進行しますが、進行が速い場合は骨や他の臓器に転移することがあります。
前立腺が肥大して尿道や膀胱を圧迫します。前立腺肥大症は転移はしません。
尿道や膀胱が圧迫され、尿の出が悪くなります(排尿障害)。その他、トイレの回数が多くなる(頻尿)、残尿感などの症状が起こることがあります。
前立腺肥大症と前立腺がんは同じ臓器である前立腺に生じる病気ですが、それぞれ独立した別の病気です。前立腺肥大症が前立腺がんに移行することはありません。
しかし、前立腺肥大症と前立腺がんが同時に発症することはありえます。
前立腺がんと前立腺肥大症では、排尿障害があらわれることがあります。
早期の前立腺がんによって排尿障害が生じることはあまりみられませんが、前立腺がんが進行すると、前立腺肥大症のように排尿障害が生じることもあります。
つまり、排尿障害があらわれているからといっても、きちんと検査しなければ前立腺がんか前立腺肥大症か、別の病気かを自己判断することはできません。排尿障害があらわれている場合は、早めに泌尿器科を受診しましょう。
前立腺がんを発見するためには「PSA検査」が行われます。
PSAとは、前立腺がんの腫瘍マーカーともいわれる血液中の物質であり、前立腺がん検診でも用いられている指標です。前立腺にのみ含まれる特殊なタンパク質であり、性状でも微量に血液中に含まれますが、前立腺がんを発症すると血液中に大量に流出するようになります。そのため、血中のPSA値が高いほど前立腺がんを発症している可能性が高いと考えられているのです。
その他、前立腺の硬さや大きさをチェックするため、医師による直腸診や超音波検査が行われることもあります。
前立腺がんの治療には、手術療法、放射線治療、ホルモン療法などがあり、前立腺肥大症の治療は薬物療法と手術療法が中心です。下記では病院で行われる前立腺がんの治療方法を紹介していきます。
手術で前立腺や他の臓器に転移したがんを摘出する方法です。手術は早期のがんに対応しており、進行し過ぎてしまった場合には適応されません。
前立腺がんは男性ホルモンの影響を受けやすく、特定の男性ホルモンの分泌が多いとがん細胞増殖の原因となります。薬剤を使って男性ホルモンの分泌を低下させる薬物療法で、がん細胞の増殖を抑える効果が期待できます。
治療効果には個人差がありますが、前立腺がんの進行を遅らせることができる人もいます。
体の外から前立腺の腫瘍に放射線を当て、がん細胞を死滅させる治療法です。転移したがんや再発したがんにも効果的とされます。治療期間は1ヵ月以上かかることが多く、費用が高価になるというデメリットがあります。
前立腺がんと診断された場合、定期的に検査を受けてがんが進行していないかチェックすることが必要です。
免疫力の低下は、がんの進行を招きます。栄養バランスのいい食事をして免疫力を上げることをおすすめします。
喫煙や飲酒はほどほどにしましょう。規則正しい生活リズムを習慣化させてください。
前立腺がんと前立腺肥大症の原因は解明されていませんが、中高年以降で特に高齢者になると発症リスクが高くなります。尿が出にくいなど排尿障害があらわれたら泌尿器科を受診することをおすすめします。前立腺がんと診断されたら、医師の指示に従って治療法を選択し、症状改善を目指しましょう。