記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/30
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
沈黙の臓器と呼ばれる肝臓に発生し、初期症状がほとんどないことでも知られる「肝がん(肝細胞がん)」。今回はこの肝がん(肝細胞がん)について、発症原因や進行した場合の症状、治療法などを幅広くお伝えしていきます。
肝臓は腹部の右側にあり、主な機能は栄養を取り込んだり、有害物質を解毒・排出する臓器です。そして、その肝臓にできる悪性腫瘍を肝がんと呼びます。
肝がんには、肝臓に直接できた悪性腫瘍による「原発性肝がん」と、他の部位にできた悪性腫瘍が転移して起こる「転移性肝がん」があります。原発性肝がんの種類としては、肝細胞ががんになる肝細胞がんの他に、稀に起こるものとして胆管細胞がん、肝細胞芽腫などがあります。なお、肝がんの約90%が肝細胞がんです。
肝がんは、肝炎ウイルスに長期間かかり続けていることで発症することがわかっています。肝炎ウイルスにかかって慢性肝炎の状態になっていたり、肝硬変になっている時には発症するリスクが高くなります。
肝がんの原因は肝炎ウイルスにかかることですが、多くはB型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスによるものです。B型では約10%、C型では約70%の人が慢性肝炎に移行します。こうなると持続的に肝臓に負担がかかっている状態になり、炎症が進むことで肝硬変や肝がんになりやすくなります。
B型やC型肝炎になった時には、その治療を行うことが肝がんの発症予防につながります。肝機能が悪くなってしまうと、そこから肝硬変になり、さらには肝がんに進行してしまうという経過をとるため、定期的に肝炎ウイルスに感染していないか検査をすることや、肝機能が悪くなってきていないかを調べておくことが重要です。もしも何らかの異常がみつかった時には早期に治療を開始することで重症化することを防げます。
肝臓は沈黙の臓器といわれており、機能が悪くなっても症状があらわれにくいとされています。実際、初期は自覚症状はほとんどなく、肝炎検査や血液検査で肝機能を調べて初めて発覚するケースが多いです。
ただし、症状が進行してくるとがん細胞が大きくなることで腹痛を起こしたり、腹部膨満感、圧迫感、しこりなどの症状がでてきます。さらに肝臓の機能が低下すると、全身のだるさや食欲不振、微熱、黄疸などの症状が出現します。貧血やむくみといった症状が出ることもあります。
肝臓の機能がかなり低下すると、お腹に水がたまる腹水の症状があらわれるようになります。さらに肝性脳症という意識障害が起こる症状を引き起こすこともあり、食道静脈瘤ができて大量出血することもあります。
肝がんの治療では、悪性腫瘍のある部位を取り除く手術療法が行われます。他にも血管に抗がん剤と塞栓剤を注入し、がん細胞に効果的に抗がん剤を行き渡らせる肝動脈塞栓術といった治療法や、局所療法として超音波で肝臓を見ながら、腫瘍部位に針を刺してラジオ波で腫瘍を壊死させるラジオ波焼灼療法、同じようにエタノールを注入してがん細胞を壊死させるエタノール注入療法があります。
これらの治療法は、肝がんの進行具合によって選択が変わってきます。そのため自分の病状が今どの段階なのかをしっかりと主治医と相談して、十分な説明を受けたうえで治療法を選択することが大切です。もしもわからないことがあったら必ず主治医に確認をして治療方針を決めましょう。
肝炎ウイルスに長期間かかり続けていることで発症する肝がん。慢性肝炎や肝硬変などの肝疾患を抱えている方は特に発症リスクが高いので、定期的な診察を欠かさないようにすることが非常に大切です。