記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/5 記事改定日: 2020/3/4
記事改定回数:2回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
化膿性脊椎炎は、背骨の骨である脊椎に細菌が感染する病気です。
高熱や背中の痛みなどの症状が現れますが、この病気はどんな人がかかりやすく、ほかにはどんな症状がでるのでしょうか。治療方法とあわせて紹介します。
化膿性脊椎炎は、脊椎(背骨を構成する骨)に細菌が感染することで発症する病気です。発症する部分は胸椎と腰椎が多く、頸椎は頻度が低いといわれています。
好発年齢は40代から50代ですが、免疫が低下した高齢者もかかる可能性があります。
化膿性脊椎炎の症状の特徴は、以下のように急性と慢性で違います。
急性化膿性脊椎炎にかかった場合は、腰背部の激痛を生じるほか38度以上の発熱を伴うことが特徴です。
慢性化した化膿性脊椎炎は、背中の疼痛については比較的軽いことが特徴であり、発熱があっても微熱で済むケースもあります。病変部分がある脊椎を叩いたり、押したりするなど大きく触れることによって疼痛を生じます。
症状が進行して膿が脊髄を外部から圧迫するようになると、下半身の痺れを訴えるようになり、そこから知覚障害や運動障害が起こりやすくなります。さらに重症化すると敗血症を引き起こすことがあります。
化膿性脊椎炎は、背中や腰の痛みと共に発熱や倦怠感、吐き気などの症状を伴います。背中や腰の痛みよりも、高熱など全身症状が強い場合は、重症な「風邪」と見分けがつきにくいです。このような背景もあり、発見が遅れさらに重症化することも少なくありません。
以下のような症状がある場合は、化膿性脊椎炎の可能性がありますので、放置せず必ず病院を受診しましょう。
化膿性脊椎炎は、細菌感染が原因で発症するケースが多く、原因菌の大半は黄色ブドウ球菌といわれています。
椎間板に近いところは原因菌が繁殖しやすい環境にあり、見つかりにくいため気づいたときには症状が進行してしまっているケースもあるので注意が必要です。
そのほか糖尿病や悪性腫瘍、肝機能障害などの持病がある人は、免疫機能が低下しているため感染しやすく、同様に高齢者も感染しやすいといわれています。
おもに血行感染(病巣部から血管に侵入した原因菌が血液を介して他の部位に拡がっていくこと)によって発症しますが、手術や検査による直接感染が原因になることもあります。
原因菌が特定できた場合は、原因菌にあわせた抗生物質を投与して治します。カテーテルを入れてから感染してしまった場合においては、その原因となる血管内カテーテルや尿管カテーテルを除去して対応します。
神経の圧迫症状が認められる場合には、たまっている膿汁を取り除く外科手術を行い、背骨の破壊が進行している場合は骨固定術や骨移植が検討されることもあります。
手術後は細菌感染に対する管理がとても重要になるため、完治するまでには1年ほど期間がかかります。かなり長期化しやすい病気であり、治りかけてもまた再発する可能性がありますので油断しないようにしましょう。
化膿性脊椎炎は、骨だけでなく神経にも障害を与えることがあります。このため、なるべく早期にリハビリテーションを開始することが推奨されています。
急性期には、コルセットなどを装着して患部の安静を図り、ベッド上で関節可動域や筋力を維持するための訓練が行われます。ある程度症状が落ち着いて歩行が可能になれば、歩行訓練などを行い、徐々に筋力を鍛えるための運動を始めていきます。
しかし、高熱がある、血液検査上高度な炎症反応があるような重度の化膿性脊椎炎の急性期では無理なリハビリを行うことで病巣を更に広めてしまう場合もありますので注意が必要です。
化膿性脊椎炎の多くは重度な糖尿病や、抗がん剤・抗リウマチ薬・ステロイドなど免疫力が低下しがちな方に発症します。
そのため、発症や悪化を予防するには、次のことがポイントとなります。
また、日常生活においてもストレスや疲れ、睡眠不足は免疫力が低下する原因になります。日ごろから生活習慣を整えて、十分な休養や睡眠を確保するようにしましょう。
化膿性脊椎炎は珍しい病気ではありますが、糖尿病など免疫力に影響する持病がある人や高齢者であればかかる可能性があります。慢性化膿性脊椎炎に関しては高熱や強い痛みが出ないこともあるので注意が必要です。
風邪など、思い当たる原因がない発熱に関しては、必ず病院で検査して原因を突き止めてもらいましょう。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。