記事監修医師
メディアージュクリニック青山、皮膚科
田中 美帆 先生
2018/3/23 記事改定日: 2019/12/27
記事改定回数:1回
記事監修医師
メディアージュクリニック青山、皮膚科
田中 美帆 先生
転んだり擦りむいたりした傷跡にできる「かさぶた」。かゆみやデコボコ感が気になって、ついつい剥がしてしまう方も少なくないでしょうが、「かさぶたは剥がさないほうがいい」という話も…。では、なぜかさぶたは剥がさないほうがいいのでしょうか?
かさぶたは、転んだり、擦りむいたときにできますが、血液中に含まれる赤血球や血小板、血液を固める働きをするタンパク質からできており、傷の表面をカバーする役割があります。
かさぶたができる理由は、傷をカバーすることで出血を止めるだけではなく、外から細菌が入るのを防ぐ働きもあります。また、乾燥していると傷の治りは遅くなってしまうので、かさぶたを作ることで内部の湿潤環境が保ち、治癒を早くするという役割も担っています。
新しい皮膚が作られて傷口が治ると、かさぶたは自然に剥がれ落ちます。しかし、化膿や炎症を起こしていると、自然に剥がれ落ちないことがあります。
傷ができると、皮膚が壊れて出血が起こります。すると体は出血を止めるために、血管を収縮させて体外に出る血液の量を減らします。このとき傷口に血小板が集まり、血の塊となって壊れた部分をふさいでいきます。
この段階で出血はおさまりますが、このままの状態では傷口を治すことができません。血小板の酵素がフィブリンと呼ばれる繊維状のタンパク質に変化し、血小板や赤血球と合わさることで、傷口をカバーしてくれる「かさぶた」ができあがるのです。
血液が蒸発することで固まると考えている人もいるようですが、そのようなことはありません。かさぶたは血液中の成分が傷口に集まり、変化することでできるのです。
なお、泥だらけの道などで転ぶと、傷口に石や泥が入ってしまうこともあるので、転んだ傷跡は、まず水でしっかり洗い流して清潔な状態にしておきましょう。
かさぶたがあると、気になったり、かゆみがあったりするのでつい剥がしたくなってしまいますが、「かさぶたは剥がさない方がいい」といわれるのには、きちんとした理由があります。
かさぶたを剥がしても、また新しいかさぶたができますが、このように「かさぶたを剥がす→新しくできる→剥がす…」というサイクル繰り返すと傷跡が残りやすくなってしまうのです。
また、傷口の治りも悪くなってしまいますし、剥がした傷口から菌が入り込みやすくなるので、感染の危険性も高まります。
症状が悪化させないようにするためにも、傷跡をきれいに治すためにも、かさぶたは剥がさないようにしましょう。
かさぶたができるのは、傷口が少しずつ治っている証拠です。しかし、その過程では強いかゆみが現れることしばしばあります。ついつい掻きむしりたくなるような感覚が生じても、かさぶたを刺激すると剥がれて治りが遅くなってしまいます。
かさぶたのかゆみに悩まされたときは次のような方法で対処しましょう。
いかがでしょうか。「かさぶたを剥がさないほうがいい」のは、傷口のカバーができなくなるだけでなく、傷跡が残りやすくなったり、新たな感染症を引き起こしたりする可能性が上がるからなのです。
ついつい剥がしたくなる気持ちもわかりますが、キレイに治すためには、少しの間ガマンしましょう。