記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/6
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
皮膚や粘膜がただれてしまった状態を示す「びらん」。今回の記事では、このびらんを伴う代表的な疾患(子宮腟部びらん、びらん性胃炎)について、ご紹介していきます。
びらんとは、皮膚や粘膜の一番上にある面の細胞が剥がれおちて、その部位が破れてしまったようにただれる状態になることです。皮膚は表になっている面からいくつかの層でできており、もっとも上にある面を表皮と呼びますが、その表皮だけが破れてしまうのがびらんです。そして粘膜は主に内臓などの内側にある膜で、表皮と同じように何層か重なってできています。粘膜は内臓以外には鼻の穴や唇、耳、生殖器にもあります。びらんは粘膜でも起こり、びらんが起こると表面の膜が破れて内側の層が露出してしまうことになります。
通常、びらんが起きた部位は層がなくなることで、へこんだ状態になります。色々な疾患が元になって起こり、体中の様々な部位でよく見られる症状です。
子宮腟部の粘膜に、びらんが起こるのが子宮腟部びらんです。子宮腟部びらんは病気ではなく、健康な女性でも見られるもので、女性ホルモンの分泌が安定してきた女性の約80%にみられるとも言われています。女性ホルモンの分泌が盛んになると子宮頸部が膨らみ、子宮頸管の中にあった粘膜上皮が外側に見えるようになるのですが、この状態になると見えている粘膜が赤いために、ただれているように見えるというわけです。
なお、子宮腟部びらんの面積が多いと、おりものが多くなるという症状があります。子宮腟部びらんの状態は個人差が大きく、全くない人から広い面積で子宮腟部びらんが見られる人までさまざまです。
胃炎が悪化して胃の粘膜にびらんが起こってしまう疾患がびらん性胃炎です。原因としては細菌やウイルス感染、強酸性や強アルカリ性などの刺激の強い薬剤の服用、タバコやアルコールの過剰摂取、暴飲暴食などが挙げられます。
また胃は精神的なストレスの影響を受けやすい臓器のため、ストレスもびらん性胃炎を起こす大きな原因のひとつです。ストレスを受けることで胃の動きが悪くなったり、胃液の量が過多あるいは過少になることで胃の粘膜がダメージを受けます。症状は胃の痛みや、吐き気、嘔吐などで、胃粘膜の損傷による出血も見られます。
びらんと似た症状のものに潰瘍があります。どちらも皮膚や粘膜の層が欠けている状態ですが、大きな違いは掛けている部分の深さです。びらんは一番外側の層だけが欠けている状態ですが、潰瘍になるとその下の層まで深くかけている状態を指します。
潰瘍は程度によって浅いものから深いものまであり、深いものになるほど痛みなどの症状が強く出ます。粘膜は表面の層の一番下に粘膜筋板があり、さらにその下に粘膜下層、筋層、漿膜(しょうまく)があるのですが、最も深い潰瘍では漿膜まで欠けてしまうことがあります。
潰瘍ができる疾患の例としては、十二指腸潰瘍や胃潰瘍が有名です。これらの疾患は潰瘍が深く大きくなると、痛みが強く出血も多く見られる病気で、ピロリ菌の感染や精神的ストレスが元で起こります。
「びらんがあります」といわれると、不安に思う方は非常に多いですが、子宮腟部びらんの場合は病気ではないので、基本的には治療の必要はありません。ただ、びらん性胃炎の場合は胃痛や嘔吐など辛い症状を伴うため、治療が必要となります。気になる症状が現れたら、まずは病院で検査を受けることが大切です。