記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/12
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
糖尿病の合併症であり糖尿病ケトアシドーシスは、命に危険が及ぶ可能性がある恐ろしい病気です。この病気はどんな症状が現れ、どのように治療するのでしょうか。この記事では糖尿病ケトアシドーシスの症状と治療についてまとめています。
糖尿病ケトアシドーシスとは急性に生じる糖尿病の合併症です。高血糖や高ケトン血症、代謝性アシドーシスとしての症状が現れます。
糖尿病ケトアシドーシスは著しいインスリン不足が原因であり、Ⅰ型糖尿病の人がインスリン注射を途中で中止したり、血糖コントロールが不良となった場合に引き起こされやすくなります。またⅡ型糖尿病の人でも、清涼飲料水を多飲して糖分を過剰に摂取することで発症することがあります。
糖尿病ケトアシドーシスの発生メカニズムについては、身体における酸塩基平衡メカニズムが大きく関与します。
通常であれば血液は弱アルカリ性で維持されていますが、インスリンが不足することで血液中のブドウ糖が使えなくなるため、代わりに脂肪が分解されてケトン体という代謝産物が作られるようになります。
ケトン体は酸性の代謝産物であることから、血液中のケトン体濃度が増加すると酸塩基平衡が崩れて血液が酸性に偏り、ケトアシドーシスを引き起こします。
ケトアシドーシスの症状として口渇や多飲、吐き気や嘔吐、全身倦怠感などが生じてきますが、重篤になると意識障害や昏睡など危険な状態に至ることもあります。
糖尿病ケトアシドーシスの検査では、主に血液検査、尿検査、心電図検査が行われます。
まず血液検査では、ナトリウムやカリウムといった電解質の浸透圧の状態、血糖値、ケトン体量を評価します。また糖尿病は腎臓機能にも大きく影響することから、尿素窒素やクレアチニンの値の評価も必要です。
そして血液検査ではもうひとつ重要な検査として血液ガス検査があります。これは動脈血を採取して先に挙げた酸塩基平衡の状態、すなわち血液が酸性、アルカリ性のいずれに偏っているかどうかを調べるものです。
次に尿検査では主に尿中の糖分やケトン体量を評価します。糖尿病ケトアシドーシスではこれらの値も上昇しやすくなります。また心電図検査については、ナトリウムやカリウムなどの電解質バランスの崩れは心臓機能に影響を与えるリスクがあることから、急性心筋梗塞などのスクリーニング目的で行われます。
糖尿病ケトアシドーシスの治療方法は、重篤な状態にまで発展させないように、早急に原因に対してアプローチすることが重要です。また、輸液による電解質の補充とインスリンの少量の持続投与も必要になります。輸液では生理食塩水でナトリウムやカリウムなどを補充して電解質のバランスを整えていきますが、輸液によるカリウムの補充は低カリウム血症を予防するという観点からも重要です。
そして、糖尿病ケトアシドーシスの治療で何よりも大切なことは、早期に治療を開始することです。疑わしい症状が出たときは、すぐに医療機関に連絡しましょう。
糖尿病ケトアシドーシスは、急性の糖尿病の合併症であり、口の渇きや吐き気などの症状が現れます。重症化すると意識障害や昏睡に陥ることもあり、最悪の場合命を落とすケースもあるのです。疑わしい症状や体の変化が現れた場合は、すぐに医療機関に連絡し、適切な治療をしてもらいましょう。