記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/2/2 記事改定日: 2019/5/23
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)はヒト細胞白血病ウイルスⅠ型(HTLV-1)を原因とする感染症であり、発症するとT細胞ががん化して様々な症状が現れます。
この記事では、成人T細胞白血病やHTLV-1の症状の特徴など、基礎的な情報について解説していきます。
成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)は、HTLV-1ウイルス(ヒト細胞白血病ウイルスⅠ型)の感染が原因の病気であり、日本の疫学的統計では九州や沖縄などに多く見られる傾向があります。
白血球の中のT細胞がHTLV-1ウイルスに感染し、感染したT細胞ががん化して、そのがん化した細胞がどんどん増殖していくことで発症します。
HTLV-1ウイルスに感染したからといって必ずしも発症するわけでありませんが、高齢者や血液中のウイルス量が多い場合などは発症リスクが高くなるといわれています。
ATLで現れやすい症状の代表的なものとしては
などがあります。
また、便秘や全身倦怠感、皮膚が剥がれやすくなるといった症状が出ることもあり、ほかの白血病などに比べると症状が多岐にわたり、個人も大きいです。
そして免疫機能が低下することから、通常であれば罹患しないような細菌感染症に加えて、髄膜炎や真菌感染症、ウイルス感染症、肺炎などを合併しやすくなります。
なお、成人T細胞白血病(ATL)の症状は病型によって異なり、急性型、リンパ腫型、慢性型、くすぶり型の4つに分類されます。
最も重症化し、早急な治療が必要となるタイプです。
体内でHTLV-1が大量に増殖するため白血球数は急増し、リンパ節の腫脹や発疹、肝脾腫などの症状が引き起こされます。また、血中のカルシウムが上昇し、強い倦怠感や意識消失などを伴うことも少なくありません。
白血球数は急増するものの、HTLV-1が感染しているため正常に作用できず、免疫力が著しく低下して重症な肺炎や尿路感染などを引き起こし、死に至るケースもあります。
リンパ節が大きく腫れるのが特徴的なタイプです。
また、発疹が現れることも多く、外見的な症状は急性型と似ています。しかし、HTLV-1の急激な増殖が生じていないため、免疫力の低下は伴わないことが多いとされています。
重篤な症状がなく、慢性的に経過していくタイプです。
皮膚の表層が剥けてただれるような皮膚病変が生じることはありますが、症状はほとんどなく命に関わることはまずありません。
白血球数が正常であるものの、皮膚や肺、血液のみにATL細胞が存在するタイプです。
多くは症状がなく、治療の必要なく経過することがほとんどですが、まれに急性型に移行することがあるので定期的な検査は必要となります。
ATLの原因であるHTLV-1ウイルスの感染経路は、母子感染、輸血、性交の3つです。
母親がHTLV-1ウイルスに感染している場合、子供への授乳の際にその母乳に含まれるHTLV-1ウイルスを介して感染します。
発症率が高い地域では、感染予防対策として妊婦検診の際に検査が実施されているので、キャリアであるとわかった場合は対策が必要です。
手術などで輸血を施す際に、HTLV-1ウイルスに感染した血液を輸血すると感染します。ただし日本においては、献血時に抗HTLV-1抗体検査が実施されているため感染リスクはありません。
パートナー間のセックスで、精液中のHTLV-1ウイルスを介して感染することがあります。ただし、セックスを介して感染しても発症する可能性は非常に低く、発症例の報告もありません。
HTLV-1ウイルスに感染していたとしても必ずしもATLを発症するわけではありません。しかし、ひとたび発症するとさまざまな身体症状や免疫機能の低下を引き起こし、重篤な合併症を引き起こしてしまう可能性もあります。
また、成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)は一度良くなったとしてもその後に再発や再燃する可能性が高く、再発や再燃をした場合はより重症化しやすいといわれています。リンパ節の腫れや皮膚病変、便秘や全身倦怠感などATLが疑われるような自覚的症状が見られる場合には疾患の重症化を防ぐためにも早急に医療機関を受診して適切な治療を受けましょう。