記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/18 記事改定日: 2020/6/22
記事改定回数:3回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
妊婦検診で「妊娠糖尿病」と診断されてしまった場合、食事のとり方に注意が必要になります。栄養やカロリーなどのバランスを気をつけるための食事制限のポイントを紹介します。おすすめレシピやおやつの食べ方を併せて参考にしてください。
妊娠糖尿病とは、妊娠中に初めて発症した糖代謝異常の一種で、まだ糖尿病までには至っていないものをいいます。
この定義には妊娠前からの糖尿病は含まれず、また、妊娠前までに糖尿病を発症したことがない人にも発症することがあります。妊婦さんで妊娠糖尿病を患っている人は、全体の約10~15%とされています。
妊娠糖尿病の自覚症状はほとんどありませんが、母体と胎児で次のような合併症を引き起こすリスクの上昇がみられます。
このため、妊娠糖尿病を早期発見するために妊娠初期・中期において妊娠糖尿病のスクリーニング検査を受けることが大切です。
通常、妊婦健診では定期的に血糖値の計測が行われます。血糖値は空腹時に90㎎/dl未満であることが理想です。
空腹時の血糖値がそれ以上ある場合には糖尿病の可能性が考えられます。
このような一般的な血液検査で糖尿病が可能性があると判断されると、血糖値の状態をさらに詳しく調べるために経口ブドウ糖負荷試験が行われます。
これは、糖分が多く含まれた検査用の飲料を飲んで、その後の血糖を時間を追って測定するものです。
のどれかに該当する場合には妊娠糖尿病と診断されます。
妊娠糖尿病と診断されたら、母体と胎児のために血糖値を正常な状態に保つことが必要となります。
血糖値の管理方法としては、食事の工夫や運動、インスリン注射などがあります。
糖質を控えたうえで栄養バランスバランスが整ったメニューを心がけ、1日の総摂取カロリーを管理していきます。
運動療法では、ウォーキングやマタニティビクス、ヨガ、スイミングなどの「妊婦さん用の運動」を血糖値の一番上がる「食後1時間後」に約30分間ほどすることが推奨されています。
インスリンは経口血糖降下薬ではなく強化インスリン治療を行うことになります。産後にはインスリンの必要量が減りますので、血糖値の変化に合わせて医師の指示により投与量が調節されます。
妊娠糖尿病における血糖コントロール方法の中でも、一番効果的といわれているのが食事療法です。
妊娠糖尿病を発症した場合は厳密な血糖値のコントロールが必要になります。このため、インスリンの自己注射などによる薬物療法も必要となりますが、食事に注意することも大切です。
妊娠糖尿病の食事療法は通常の糖尿病における食事療法と基本的には同じで、次の2点が基本的なポイントです。
食事療法では、炭水化物や糖分の摂取量に注意する必要があります。
糖として吸収される炭水化物には白米・パン・根菜類・かぼちゃなども含まれ、果物(果糖)やスポーツ飲料などの糖分にも普段から気を配る必要があります。
カロリーの摂り過ぎは糖尿病を悪化させることにつながりますので、摂取カロリーは厳守するようにしましょう。
また、肉類など脂質の多い食品や甘い物など糖分の多い食品の取り過ぎには注意が必要です。野菜や魚介類などを中心にバランスよい食生活を心がけましょう。
糖尿病では、空腹時の血糖値だけでなく食後の血糖値を抑えることもポイントです。1日の総摂取カロリーを4~6回くらいに分けて「分食」することをおすすめします。
妊娠中は胎児の成長のためにも一定のカロリー摂取は必須です。タンパク質・ミネラル分などはしっかり摂取しましょう。
妊娠中はつわりや大きくなった子宮が胃を圧迫することなどによって、一度に多くの食事を摂れなくなることがあります。そのような場合には、一日の摂取総カロリーに注意しながら一日五食など小分けにするようにしましょう。
妊娠中は、妊娠していないときよりも多くのカロリーが必要であり、空腹時につわりがひどくなる人はおやつを食べてもかまいません。
ただし、あまりに高カロリーなものや糖分が多いものは高血糖のリスクになりますので避けましょう。
妊娠糖尿病も食生活に注意することで発症や悪化を防ぐことが可能です。ここでは、妊娠糖尿病の人におすすめのレシピを3つご紹介します。
がっつりメニューで満腹度が高いグラタンですが、高カロリーのため妊娠中は控えている人も多いでしょう。ホワイトソースの代わりに絹ごし豆腐を利用するだけで低カロリーで良質なたんぱく質を多く摂ることができます。さっぱり味なのでつわり中にもおすすめのメニューです。
鶏むね肉は高たんぱく低カロリーな食材であり、妊娠糖尿病の強い味方です。噛み応えがあるため、満腹感を得ることができるおすすめメニューです。鶏肉にはしっかりと火を通すように注意しましょう。
妊娠中でも食べたくなるおやつ。低カロリーで満足度が高いものの代表がゼリーです。市販のおやつは高カロリーで糖分が多く含まれています。手作りはカロリーを抑えながらお好みの果物を入れるなどができますので、挑戦してみましょう。
妊娠糖尿病は通常、産後6~12週間の内に治るとされています。これは、妊娠糖尿病の原因であった胎盤から産生されるホルモンが出産によって排出されるためです。
しかし、妊娠糖尿病に罹ったことのある人は、正常な人に比べて将来的に糖尿病を発症するリスクが高いことがわかっています。
妊娠糖尿病が治ったからといって食生活の大幅な乱れを起こすのは避けましょう。
妊娠中のような厳密な食事制限は必要ありませんが、適切なカロリーと野菜を中心とした栄養バランスの取れた食生活を心がけてください。
妊娠糖尿病を発症した人は、糖尿病を予防するためには食事以外にも次のようなことに注意しましょう。
妊娠糖尿病は、流産や早産のリスクを高めたり、発育不全を招いたりする可能性があります。毎日の食事でカロリー計算や血糖コントロールすることが改善のカギとなるので、できることからひとつひとつ実践し、元気な赤ちゃんを産み育てられるようにしてください。