記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/12 記事改定日: 2019/4/15
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
中高年の発症率が比較的高い感染症の一種に、「レジオネラ症」があります。今回の記事ではレジオネラ症について、症状や感染ルート、治療法など全般的な情報をお伝えしていきます。
レジオネラ症は、レジオネラ属菌という細菌が原因となって引き起こされる感染症です。流行は季節を問わず、中高年の発症率が高い傾向にあります。
レジオネラ属菌は50種類以上の菌種があり、自然界の土壌や淡水域に幅広く生息しています。低温では20℃、高温では50℃の範囲温度で繁殖します。
レジオネラ菌に感染すると、全身倦怠感、頭痛、筋肉痛などの症状にはじまり、乾いた咳、痰、高熱、悪寒、胸痛の症状があらわれます。さらに、レジオネラ症を発症すると腹痛や下痢等の消化器症状や軽度の意識障害、四肢の振戦などの中枢神経系の症状がみられることも特徴となっています。
レジオネラ症は、「レジオネラ肺炎」と「ポンティアック熱」の2種類に分類されます。
ポンティアック熱は発熱を主症状とし、発熱や頭痛、筋肉痛などの症状があらわれますが、一般的には軽度な症状となる傾向があります。肺炎症状はみられず、2〜5日程度で自然治癒する場合がほとんどです。
レジオネラ肺炎は高熱や呼吸困難、吐き気、意識障害などがあらわれ、重症化すると死亡する可能性もあります。
特に、幼児や高齢者、他の病気に罹っているなど免疫力が低い場合には、重症化する可能性が高くなったり、有効な抗生物質治療がなされない場合は致死率が高くなったりするので注意が必要です。
レジオネラ症の主な感染ルートは経気道感染です。より具体的に言えば、レジオネラ属菌が循環式浴槽水、空調の冷却塔水、給湯設備などに侵入・繁殖し、そこから発生するエアロゾル(霧状になった水)を肺へ吸入することによって感染します。そのため、空気感染や飛沫感染が主な感染ルートとなります。
ほかに、レジオネラ菌に汚染された水と直接接触したことで外傷が化膿して皮膚腫瘍となったり、その水を飲んでしまったことで感染した症例もあります。なお、人から人への感染はないとされています。
レジオネラ症は薬物療法で治療できます。レジオネラ属菌は、体内の異物を取り入れ分解する働きをもつ食細胞(マクロファージ)という細胞の中で増殖するため、細胞の中で薬剤の効果が出る種類の抗生物質を服用することで症状が改善されます。ニューキノロン系、テトラサイクリン系、マクロライド系などの抗生物質を服用することによって治療を行います。
なお、細菌性肺炎によく使われるようなペニシリン系抗生物質やセフェム系抗生物質では効果を得ることができないため注意が必要です。レジオネラ症の症状が重症化していると考えられる場合には、人工呼吸器治療や抗凝固療法、人工透析など様々な治療が必要となります。
レジオネラ症の原因となるレジオネラ菌は土壌や川など自然の環境中に広く存在しています。しかし、一か所に存在する菌量は少ないため自然の環境の中から感染することは少ないです。ただ、自然界のレジオネラが水を利用する温泉や噴水などの施設内で繁殖すると空気中を舞って感染することがあります。
また、手入れの行き届いていない家庭内の加湿器や空調機器などが原因で感染することも少なくありません。
このため、レジオネラ症を予防するには以下のような対策がすすめられています。
レジオネラ症のうち、特にレジオネラ肺炎を発症してしまった場合は、早期に適切な治療を行わないと命を落としてしまう可能性が高いとされています。高熱や呼吸困難など異変がみられたら、すぐに病院を受診しましょう。