記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/1/9 記事改定日: 2019/3/22
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
褐色細胞腫とは、高血圧や不整脈、頭痛などの症状が現れる病気です。これらの症状は腫瘍から分泌されるホルモンの作用で起こります。この記事では、症状や原因、治療の注意点など、褐色細胞腫の基礎知識を紹介していきます。
褐色細胞腫は副腎髄質や交感神経節細胞にできる腫瘍のことです。腫瘍から分泌されるカテコールアミンというホルモンが様々な症状の原因となると考えられています。
褐色細胞腫はほとんどが良性とされ、良性のものは摘出手術で完治可能です。ただし、約10%は悪性腫瘍であり、骨や肝臓などに転移するおそれあるといわれています。
褐色細胞腫を発症する原因についてはまだ明らかになっていませんが、遺伝的な要因が関係していること指摘されています。そのため遺伝的にリスクが高い場合には、小児の頃から定期的な検査をするようにしましょう。
発症頻度の低い希少疾患ではありますが、発症に男女差はなく、年齢的にも様々な年代で発症するといわれているので楽観視はできません。
カテコールアミンはアドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミンの3種類があり、全てを総称してカテコールアミンと呼ばれています。
褐色細胞腫を発症すると、これらのホルモンが過剰に分泌され
などの症状があらわれます。
その他にも
が起こることもあり、これらの症状は褐色細胞腫が圧迫されるような姿勢になったときに発作的に起こることが大半のようです。
横ばいになったときや前屈をしたとき、食事のとき、排便のときなどに症状が強くなることが多く、腹部の触診で腫瘍部位が圧迫されたときに症状が起こることもあります。
褐色細胞腫を発症する原因はまだ明らかになっていません。
カテコールアミンが過剰に出るのは副腎髄質や傍神経節に腫瘍ができるからということはわかっていますが、その腫瘍が何故できるのかは未だはっきりしないままです。
しかし最近の研究では、コハク酸脱水素酵素の遺伝子異常を約30%に認めることが報告されていることから、上記でも説明したように遺伝的な要因が発症に関係していると考えられています。
問診や触診などで症状の確認が行われ褐色細胞腫が疑われると場合は、尿中や血液中のホルモン量を測定します。
ただ、カテコールアミンは症状が出るときに多く分泌されているため、発作が起きていないときに検査をすると正常値が出ることがあります。そのため発作直後の尿で検査をしたり、1日分の尿をためておいて検査を行うこともあります。
腫瘍の部位を確認するときには腹部の超音波検査やCT検査、MRI検査などを行います。
現在では褐色細胞腫の手術は腹腔鏡を用いて、身体への負担を最小限に抑えた術式で行われることがほとんどです。
腹部に3㎝程の切開を数か所に行い、そこから先端にカメラが内蔵された腹腔鏡や手術器具を挿入し、カメラの画像を見ながら副腎を提出します。
手術時間は1~2時間ほどで終了し、大半は術後一週間ほどで退院できます。
しかし、褐色細胞腫は急激に血圧が高くなるなど、手術中に出血などを起こしやすい状態となりうることがあるため、手術前には十分な降圧剤の投与や輸液を行う必要があります。
このため、全身状態を管理する目的で手術の一週間ほど前から入院して術前の治療を開始するのが一般的です。
褐色細胞腫は、腫瘍からカテコールアミンが分泌されることで症状が現れますが、高血圧や頭痛、過剰な発汗など他の病気でも起こる症状が現れます。そのため症状だけで病気を特定することは困難です。定期健診はもちろんですが、遺伝リスクがあると思われる場合は、子供のうちから継続的な検査を行うようにしましょう。