記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/22
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
B型肝炎患者の女性が妊娠した場合、心配になることが多いのが「子供に母子感染するのかどうか」です。では、果たしてB型肝炎は母子感染するのでしょうか。以降で解説していきます。
肝臓に炎症が起こる病気が肝炎ですが、肝炎の原因は肝炎ウイルスへの感染、アルコール、自己免疫疾患などさまざまです。このうち肝炎ウイルスにはいくつかの種類がありますが、B型肝炎ウイルスに感染した時はB型肝炎を発症することがあります。B型肝炎ウイルス感染者は高齢の人が多いことが特徴ですが、近年では性的接触を元にした若い人の感染が多くなってきています。
B型肝炎は、B型肝炎ウイルスに感染している人の血液や体液に触れることによって感染が拡大し、感染した後には一過性の感染期間を経て治癒する場合と、6カ月以上感染が継続する場合とがあります。思春期以降に感染した場合の多くは、一過性のものです。
B型肝炎に感染する経路としては、垂直感染と水平感染の2種類があります。
垂直感染というのは、出産時に母親から赤ちゃんへとB型肝炎ウイルスが感染することです。母親がB型肝炎ウイルスに感染している場合には、出産時に赤ちゃんが産道を通ってくる時に感染してしまうことが多くあります。
一方、水平感染というのは、性的接触、輸血、臓器移植、刺青、針刺し事故などでB型肝炎ウイルスが体内に入ってしまうことです。B型肝炎は、ウイルス感染している人の血液を輸血することで、感染が広がっていきます。臓器移植の時も同様に、臓器を体内に入れることで感染します。こういった感染経路は現在では対策がしっかりとられるようになり、感染することが少なくなってきています。
B型肝炎の垂直感染である母子感染は、陣痛が起こったタイミングから始まると考えられています。そのため、赤ちゃんが生まれてからできるだけ早い時期に感染防止策を開始することが重要です。現在の感染防止方法としては、生後5日以内に抗HBV免疫グロブリンを接種します。生後12時間以内の接種が望ましいです。
また、これと同時にHBワクチンの接種もします。なお、初回のHBワクチンの接種から1か月後に2回目の接種をし、さらに初回の接種から6カ月目後に3回目の接種をする必要があります。この方法ではおよそ90%の赤ちゃんが感染を防止できますが、100%予防できるわけではありません。生後9~12カ月の頃に血液検査で感染を防げているかを調べます。
B型肝炎ウイルスは感染しても自覚症状があらわれないことがあるので、血液検査をして自分がHBVキャリアかどうかを調べておくことが重要です。検査をしてHBs抗原が陰性の場合には、B型肝炎ウイルスに感染していないことになり、陽性の場合には感染していることになります。なお、HBs抗体が陽性であれば、一度感染した後に治癒したことを示します。HBVワクチンを接種した時もHBs抗体が陽性になります。
B型肝炎は母子感染することがありますが、赤ちゃんが生まれてからすぐワクチンを打つことで、多くの場合は感染予防が可能です。ただ、実はウイルスに感染しているにもかかわらず、自覚症状がないために気づいていないケースもあるので、出産前には必ずB型肝炎かどうかの検査を受けるようにしましょう。