胆嚢炎の原因と治療方法とは?食事療法はどうやって進めていけばいい?

2017/12/27 記事改定日: 2020/6/9
記事改定回数:2回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

「胆嚢炎(たんのうえん)」を治療する上では、正しい食事療法が非常に重要です。今回の記事では、胆嚢炎の原因と治療や食事の注意点もついて解説していきます。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

胆嚢炎(たんのうえん)の原因は?

胆嚢は肝臓で作られた胆汁を一時的に保管して濃縮する場所です。ここで胆汁を保管しておいて、体の中に食物が入った時に合わせて胆汁が分泌されて十二指腸へ排出されますが、胆汁はおもに脂肪分を分解する消化酵素からできています。

そして胆嚢炎(たんのうえん)はこの胆嚢に炎症が起こる病気であり、そのおもな原因となるのは胆石です。これは胆石が胆汁の通り道を防ぐことで胆汁が排出されくなってしまい、細菌感染を起こすことで発症します。

胆石がない胆嚢炎は

  • 長期間にわたる絶食
  • 何らかの原因で胆管が詰まってしまった
  • 糖尿病や動脈硬化症、膠原病などの病気

が原因であることが多いです。
また、肝動脈塞栓術の後に胆嚢炎を発症する事例もあります。

胆嚢炎の症状

胆嚢炎を発症すると、まずは食後を中心に右上腹部に痛みが走るようになります。炎症が強くなると、痛みは食後だけでなく断続的に生じるようになり、背中や腹部全体に広がっていき、腹痛だけでなく、38℃以上の発熱、悪寒、倦怠感、食欲不振、吐き気・嘔吐など全身的な症状が現れるようになります。

胆石などで胆管が詰まることによって引き起こされる胆嚢炎の場合には、重症化すると胆汁の流れがうっ滞するようになるため、白目や皮膚が黄色くなる「黄疸」と呼ばれる症状が現れたり、肝臓の機能が低下したりすることもあります。

また、胆嚢炎は重症化すると敗血症に移行した場合は、治療が遅れると命に関わることもあります。

胆嚢炎を引き起こす胆石は何がきっかけでできるの?

胆嚢炎のおもな原因である胆石は、胆嚢や胆管に結石ができる病気です。
胆石にはいくつかの種類がありますが、最も多いのはコレステロール結石です。これは、高コレステロール血症の人が発症しやすく、胆汁内にコレステロールが増えることで、過剰なコレステロールが結石化することで発症します。

そのほかの原因には、ビリルビンやリン脂質が固まって結石ができることもあります。なお、胆石の種類によって症状の違いが出ることはほとんどないと考えられています。

胆石の症状

胆石は無症状のことも多いですが、胆石が大きくなると胆嚢の壁を傷つけたりすることで非常に強い痛みを生じることがあります。痛みは一時間程度で治まることが多いですが、放置すると胆石が徐々に大きくなり、胆汁の流れを阻害するようになると胆嚢炎を引き起こすので注意しましょう。

胆嚢炎の治療は食事の改善が必要?どうやって見直せばいい?

胆嚢炎の原因のほとんどが胆石であるため、胆嚢炎の治療では胆石ができないような食事に食生活を変えていく必要があります。

胆石ができないようにするためには、以下の2点を心がけましょう

  • 脂質やコレステロールを摂り過ぎない
  • 食物繊維を多めに摂ってコレステロールの排出を促す

具体的には肉の脂身や脂がのっている魚は避け、バターや洋菓子も脂肪分が多いので避けたほうがよいでしょう。
調理方法も重要です。揚げ物にすると脂肪分が増えてしまうので、なるべく揚げ物は避けてゆでたり蒸したり焼くといった調理法にするようにしてください。また卵や乳製品も避けたほうがよいでしょう。

胆嚢炎になったときの食事

胆汁の分泌を正常にするためには、規則正しい時間に食事をとることが重要です。同じ時間に食事をとることで体のリズムができてくると、胆汁も同じ時間に同じような量を分泌しやすくなり、胆汁が溜まってしまうことを防げます。
早食いを防止することも胆汁の余分な分泌を防ぐので、食事はよく噛んで食べるようにしましょう。

脂肪分とコレステロールはなるべく摂取しないようにして、食べるときはできるだけ少量になるようにしてください。

ただし、絶食をしてしまうと胆汁が流れずに胆嚢内に溜まりがちになってしまうので良くありません。食欲がわかないときや忙しいときでも、何かを口にするようにして絶食状態を避けるほうが、胆汁が胆嚢内にとどまって必要以上に溜まってしまう状態になることを防げます。

胆嚢炎の食事療法の流れ

胆嚢炎になってしまった場合には、炎症を起こしている急性期には絶食をして消化器を安静にして炎症がおさまるのを待ちます。その間は入院をして点滴などで栄養を補い、少し症状が落ち着いてきたら流動食から開始して徐々に食事量を増やしていきます。
なお、症状が落ち着いてからも脂肪分をできるだけ減らした食事を続ける必要があります。

しかし、長期間脂肪分を制限していると、胆汁の排泄量が減り自浄作用も低下することで感染を起こしやすくなります。病状が落ち着いたら、医師と相談しながら脂肪分を適量摂るようにしましょう。

また、朝食を抜いたり夕食が遅い時間になると胆汁が濃縮されやすくなるので、食事と食事の間の時間が決まった間隔になるように規則正しい食事を心がけてください。

おわりに:胆嚢炎の原因は胆石。食事療法のときは、食べ方に気をつけることも大切

胆嚢炎の食事療法では、食材やおかずに気をつけることはもちろん、早食いを避ける、規則正しい時間に食べるといった食べ方も重要になります。ご紹介したポイントに気をつけて、一日も早い胆嚢炎の改善と予防に努めましょう。

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