記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/1/10
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
脳動静脈奇形は脳血管の奇形が原因で動脈と静脈がつながってしまう病気です。脳内出血のリスクが高くなる病気のため、早期の治療が必要になります。この記事では、脳動静脈奇形の治療法と再発の可能性について詳しく解説しています。
脳動脈瘤奇形(のうどうじょうみゃくりゅうきけい)は、通常直接つながるはずのない動脈と静脈が、脳内にできた奇形の血管の塊(ナイダス)によって連絡してしまう病気です。
本来だと毛細血管を通ってから静脈に入るはずの血液が、脳動脈瘤奇形の連絡により、動脈を通る高い圧力のまま静脈に流れ込んでしまうのです。
以前は胎児の頃に発症する先天性の病気だと考えられていましたが、妊娠中の検診で発見されるケースは少なく、近年ではこの考え方を疑問視する声も出始めました。
このため、最近では生まれつきの病気ではなく、生まれた後に発症する血管異常と考える説が有力となっています。
脳動脈瘤奇形は、放置しておくと脳内出血のリスクが高くなる恐ろしい病気です。
脳動脈瘤奇形本体の血管は脆くて壊れやすいので、放置して動脈からの強い血圧がかかり続けると、破裂や出血を起こして様々な合併症を引き起こす原因となります。
脳内出血が起こると、痙攣やてんかんの発作が出たり、くも膜下出血や脳梗塞を起こして意識を失い、そのまま死亡してしまうリスクもあります。
回復しても脳内に出血によるダメージがのこり、体の麻痺やけいれん、意識障害、頭痛などの合併症を発症してしまうことも少なくありません。
脳動脈瘤奇形の人のうち、年間6~18%の人が脳内出血を起こすとされ、その後出血の回数が増えるごとに死亡のリスクも上がっていくといわれています。
発見時にまだ一度も出血していない場合は将来出血するリスクを、一度出血している場合には再出血のリスクを減らすために、一刻も早い治療がすすめられています。
脳動脈瘤奇形自体を取り除く薬はなく、主に開頭手術、ガンマナイフ(放射線治療)、カテーテルによる塞栓手術のいずれかの方法で治療します。
以下に、3種類の治療法について説明していきます。
頭蓋骨の一部を開けて、脳動脈瘤奇形の本体を摘出します。
あらかじめ脳血管造影検査で血管の構造をよく調べたうえで行いますが、奇形本体の位置によっては難しい手術になったり、手術で取り除けない場合もあります。
脳動脈瘤奇形があるエリアに高度の放射線をあてて治療する方法です。
手術ではないので1回の治療時間と体への負担は少ないですが、奇形の大きさによっては行えない場合もあり、治療の効果を得るのに時間がかかるのが特徴です。
2~3年にわたる長期の治療と観察が必要になります。
太ももの付け根の近くにある太い血管からカテーテルと呼ばれる管を脳内まで入れて、脳動脈瘤奇形本体とここに血液を送る血管の入り口に薬を流し込み、血管を閉じる手術です。
メスを使わないので開頭よりも体への負担が少なく、他の2つの治療と一緒に行われることもあります。
脳動脈瘤奇形は、放置すると脳内出血を起こす可能性のある恐ろしい病気です。しかし近年では、3種類もの治療法が確立されています。症状や状態によっても適切な治療法は変わってくるので、発見したらできるだけ医師に相談し、治療方針を決めてくださいね。