記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/1/12 記事改定日: 2018/8/6
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
高次脳機能障害とは、言語機能や記憶、注意力などの「認知力」に影響が出る障害です。交通事故などをきっかけとした頭部外傷が原因で発症することが多いといわれています。この記事では高次脳機能障害の原因と症状、治療などを紹介していきます。
セルフチェックリストも紹介しているので、早期発見に役立ててください。
頭部外傷とは、外部からの強い力が頭部にかかるこことによって起こるケガ(外傷)のことです。
統計によると、頭部外傷のうち約60%は交通事故によるもので、他の原因としては転落・転倒・幼児虐待などがあるといわれています。
皮膚であれば出血や内出血、頭蓋骨なら骨折、脳であれば頭蓋内損傷という外傷になます。頭部外傷を負うと、損傷を受けた脳の部位によっても異なりますが、最も深い脳にまで損傷が及ぶと頭痛や嘔吐、麻痺(運動、顔面)、感覚障害(手足のしびれ、触覚が弱い)、言語障害、意識障害、けいれん発作などの症状が現れます。
高次脳機能障害とは、頭部外傷などにより脳が損傷を受けた際に、主に言語、記憶、注意、情緒と言った「認知機能」と呼ばれる脳機能に障害が出ることを言います。交通事故などによる頭部外傷や、脳卒中などによって発症しやすいとされる病気です。
その他、脳炎、窒息などによる低酸素症、脳腫瘍、てんかん、パーキンソン病などにより脳に損傷を受けた場合にも発症します。
高次脳機能障害では、大脳のうち前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉のどの部分を損傷しているかによって、代表的な症状が変わります。
大脳の前部を損傷した場合、特に注意・情緒面に症状が現れやすくなるといわれています。
人の意見を聞けない、相手に気遣いや思いやりを持てなくなる、注意・集中力がない、こだわりが強くなる、怒りっぽくなり元気がない、などが代表的な症状です。
大脳の頭頂部を損傷した場合、特に注意面に症状が出やすくなるといわれています。
今いる自分の場所がわからない、道に迷う、服を着ることができない、食べ物を見落とす、その場の雰囲気をつかむことができない、などの症状が代表的です。
大脳の横の部分を損傷した場合は、特に記憶面に症状が出やすくなるといわれています。
人との約束を覚えられない、昨日の食事も思い出せなくなることがあります。
脳の後ろの方を損傷した場合には、認知・言語面の症状が現れやすくなるといわれています。
字や言葉、数字を理解できない、左右がわからない、人や物も名前が出てこなくなる、などの症状が現れます。
高次機能障害は、麻痺や構音障害などの身体所見や症状に関連するCTやMRIでの脳の異常がないため、発見が遅れがちになることが多いといわれています。そのため、日常生活上の様々な困難に本人だけではなく周囲の人も深刻な悩みを抱えているケースが少なくありません。
以下のような病歴や障害歴がある人は高次機能障害を発症する可能性があります。
これらの病歴に該当する人で以下のような症状が見られる場合には、高次機能障害を発症している可能性が考えられますので、病院を受診して相談することをおすすめします。
高次脳機能障害の治療法には手術と投薬がありますが、残念ながら根本的な治療法は確立されていません。
これらの治療法は発症から1年以内に実施すれば効果が期待できるとされていますが、2年以上経っている場合は症状が固定化するため、治療が難しくなります。
このため、対症療法として注意力や集中力を高める訓練や、メモや録音を使用した記憶補助の訓練など、社会復帰するためのリハビリテーションが行われるのが一般的です。
高次脳機能障害は見た目にわかりにくく、周囲はもちろん患者本人も発症に気づけないケースが多いことから、症状への理解を得られないまま辛い思いをする人も少なくありません。
交通事故などによる頭部外傷で引き起こされやすい高次脳機能障害は、発症から時間が経過するほど症状が固定化し、治療と回復が難しくなります。本人と周囲の両方にとって早期の発見、治療が大切なので、疑わしい症状が出たらすぐに医療機関を受診しましょう。