記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/1/15
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
前十字靭帯損傷とは、スポーツ中に起こりやすい外傷であり、ポピュラーなスポーツ障害といえるでしょう。一度切れてしまった靭帯が自然につながることはないため、損傷がひどいときは手術が必要になります。この記事では、前十字靭帯損傷の手術後のリハビリについて解説しています。
前十字靭帯とは膝関節内部にあり、太ももの骨(太腿骨)とすねの骨(脛骨)を結んでいるものです。
前十字靭帯損傷の多くはスポーツ中、とくにジャンプや急激な方向転換をした際に、自分の意思とは異なる方向に膝関節が持っていかれたり、体重がかかったりすることで起こります。損傷を受けると膝がガクッとなり、ブチッという断裂音が鳴ります。
前十字靭帯は、損傷しても自然治癒しないため、損傷が大きなものは治療を行わないとスポーツへの復帰は困難になることが多いです。治療では、手術によって靭帯の再建を行います。これは他の部位から腱を切り取り膝関節内に移植する手術です。手術後は1~2週間で退院となり、リハビリを継続していけば、約7ヶ月でスポーツ復帰が可能になるといわれています。
手術後、再建靭帯は徐々に成熟して強度が高まっていきます。そのため、長期に渡るリハビリが必要となります。
手術直後は、氷嚢やアイシングマシーンで患部の炎症を抑えながら、下半身の循環改善のために足関節や足指を動かします。膝関節を動かしやすいよう筋肉や皮膚の改善をはかるリハビリも行われます。
炎症が落ち着いてきたら、日常生活動作ができるようになること目指しリハビリが継続されます。手術後2ヶ月頃までは靭帯はまだ非常に弱いため、日常生活やトレーニングは再建靭帯にできるだけストレスをかけないよう最新の注意を払いましょう。
リハビリでは、トレーニング前に行う検査結果をもとに理学療法士がより適切なメニューをその都度作成してくれるので、理学療法士の指導に従い再建靭帯に負担がかからない安全な方法で筋力強化を続けていきましょう。
靭帯の強度が上がるにつれ、トレーニングメニューも高度なものに変わります。術後3~6ヶ月は、膝関節に体重をかけて筋力の積極的な改善をはかるほか、股関節や足関節、体幹を含めた関節同士の連動性を高めます。両手で膝のお皿をつかんで上下左右に動かすことから始め、膝を曲げて体に抱き寄せるようにしたり、寝た状態でふくらはぎの筋肉を動かすといったことも行われます。
術後7ヶ月以降は靱帯もかなりの強度を持つようになるため、実践的なトレーニングを行います。腹筋や背筋のほか、「サイドベント」のような肘と足で体を持ち上げる訓練もあります。つま先立ちやスクワット、股関節を強化する運動、ゴムを使った膝の伸展運動や屈曲運動なども大切です。
ただし、リハビリの効果をあげあるためには、膝を曲げないなどの注意点を守る必要があります。自己流で行うことは避け、必ずスポーツドクターや理学療法士などの指導のもとで行いましょう。
スポーツ中に起こることの多い前十字靭帯損傷は、スポーツ復帰するには手術、リハビリを行わなければいけない場合もあります。手術後は再建靭帯の強度にあわせ、慎重にリハビリを行うことが重要です。必ず理学療法士などプロの指導のもとで進めていきましょう。