妊娠性エプーリスとは? 治療が要らないって本当?

2018/2/1

記事監修医師

日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科

川俣 綾 先生

エプリースは歯茎にできる腫瘍のことですが、妊娠中にできるエプリースのことを妊娠性エプリースと言います。エプリースは切除治療が基本になりますが、妊娠性エプリースは特別な治療は必要ないとされています。下記の記事で詳しく解説していきましょう。

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妊娠性エプーリスとは?

「エプーリス」は、歯肉(歯ぐき)にできる良性の腫瘍です。症状のあらわれ方はさまざまですが、前歯の歯間の歯肉にできることが多く、進行は緩やかで、著しく大きくなることはほとんどありません。しかし大きくなると歯が傾いたり離れて開いたりしてしまい、抜歯が必要になることもあります。また、悪性腫瘍がエプーリスと似た形であらわれることもあるので注意が必要です。

エプーリスは、歯石や歯肉炎、歯に合わない詰め物やかぶせ物など歯肉の周りの慢性的な刺激や炎症が原因とされていますが、女性ホルモンが影響しているともいわれ20~30歳代の女性、特に妊娠中の女性に多くみられます。
「妊娠性エプーリス」は、免疫力が落ちやすい妊娠中にできるエプーリスで、ホルモンバランスの変化による炎症が原因と考えられています。主に妊娠初期から中期にあらわれ、歯間の歯肉が腫れて、さわると痛みや出血があることがあります。

妊娠性エプーリスは治療する必要が無いって本当?

妊娠中は口内トラブルが増えるといわれています。原因は、ホルモンバランスの変化のほか、つわりによる口腔内の酸性化や食生活の変化などにより口の中が汚れやすくなることにあります。虫歯になったり歯ぐきが腫れることも少なくありません。

歯ぐきのできものであるエプーリスは、一般には切除する必要がありますが、妊娠性の場合は分娩後に自然に小さくなるか消えてしまうことが多いことから、焦る必要はありません。治療せず経過観察する場合がほとんどです。ていねいに歯をみがき、歯科医院で歯のクリーニングを行って歯垢や歯石を取り除き、合っていない詰め物やかぶせ物があれば交換をします。歯ぐきのマッサージも効果があるといわれています。切除は大量の出血があることから避ける傾向にあり、現在ではレーザー治療が行われることが多いといわれています。

妊娠性エプーリスをはじめ、妊娠中の口内トラブルを予防するには

妊娠中の口内トラブルを予防するには、「歯磨き」と「食事」に気をつけることが大切です。
まず必要なのは丁寧な歯磨きです。歯の表面だけでなく歯ブラシの毛先を歯と歯ぐきの境目にあてて磨きます。つわりで歯磨きがつらい場合は、歯磨き剤を使わずに磨いたり、小さめの歯ブラシに変え、顔を前に傾けて掻きだすように磨いたり、磨く順序を上の歯の内側を最後に変えるなど、吐き気を抑えられるような工夫をします。歯ブラシを口に入れられなければフロスや歯間ブラシを使い、それも難しければ口をすすぐだけでもするようにします。
また食事では、つわりで一回の食事量が減るなどして逆に間食が増えがちになりますが、必要以上の間食は虫歯だけでなく肥満や中毒症にもつながります。甘いものばかり食べるなどのかたよりに気をつけ、一回の間食の量を制限するなどの工夫が必要です。

おわりに:口内トラブルは工夫して予防し、異常があれば早めに担当医に相談しましょう

妊娠性エプーリスをはじめ、ホルモンバランスの変化する妊娠中にはさまざまな口内トラブルが起こりやすくなります。妊娠中の治療は注意を要するものです。意識して口内を清潔に保つ工夫をし、異常があれば早めに担当医に相談しましょう。

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