記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/1/25 記事改定日: 2018/6/11
記事改定回数:1回
記事監修医師
前田 裕斗 先生
HIV(ヒト免疫不全ウイルス)とは、エイズを発症させるウイルスのことです。主な感染経路はセックス(性行為)になりますが、母子感染する可能性もあります。この記事ではHIVの特徴について解説しています。
HIVとは、ヒト免疫不全ウイルスといい、いわゆる「エイズ(後天性免疫不全症候群)」を引き起こすウイルスとして知られます。
人の免疫力を大きく低下させるエイズは、かつて不治の病として怖れられ、エイズを発症すると、通常では感染することがない感染症に次々とかかってしまい、悲惨な最期を遂げてしまうことも少なくありませんでした。
しかし、現在ではHIVがエイズ症状を起こさずに潜伏している期間を引き延ばす薬が開発されています。HIVを感染を完全に治すことはできませんが、一生涯にわたってHIVが潜伏していれば何も問題ありませんので、早期に適切な治療を始めることが大切です。
HIVは非常に感染力が弱いウイルスです。HIVはコンドームを使用しない性行為での感染が最も多いとされていますが、1回あたりの感染率は0.1~0.5%です。
また、感染者の血液や体液が目などの粘膜に付着することで感染する確率は0.1%以下であり、日常生活の中で感染する可能性は極めて低く、周囲に感染者がいたとしても感染する可能性はほとんどないといってよいでしょう。
HIVが他者に感染するのは非常に限られた機会だけです。それぞれ以下のような感染経路があります。
感染者の血液を輸血すると90%以上の確率で感染すると言われています。
しかし、現在では輸血の安全性を図るため、献血によって採取された血液は厳重な検査が行われ、HIVに感染した血液が輸血されることはまずありません。
感染者の血液が付着した注射や入れ墨を施行するときに使用する針、ピアス開け器などの医療器具を適切な消毒をせずに使いまわすことで感染することがあります。
最もリスクが高いのは、静脈注射でのドラッグの回し打ちであるとされていますが、医療従事者が感染者に使用した注射や点滴の針を誤って自分に刺してしまうことが原因になることもあります。
HIV感染の最も多い原因は、性行為です。特に男性同性愛者間のアナルセックスで感染が広がりやすく、通常の性行為より5倍の感染リスクがあるといわれています。
また、感染者との口淫でも感染する可能性がありますので注意が必要です。
HIVの感染を予防するには、「感染者の体液に触れない」ことに尽きます。
特に注射の使いまわしや医療器具の不適切な使用は感染が成立する可能性が高いですので、使い捨てや消毒を徹底することが必要です。
また、不特定多数や感染者かどうか不明な人との性行為では正しくコンドームを用い、体液との接触を可能な限り避けるようにしましょう。
結論から言うと、HIVは母子感染する可能性はあります。ただし、その母子感染のリスクは、ある程度コントロールできます。
HIVキャリアの妊婦が何も対策を採らない場合、HIVが子供に感染する確率は、約30%といわれています。しかし、意識を高く持って対策をとった場合、母子感染のリスクは1%以下にまで軽減できると考えられているのです。
妊娠中にはどんな予防対策をするの?
HIVを胎児に感染させない対策とは、主に次の通りです。
HIVは、母子感染の中でも、胎内感染を起こす可能性は低いのですが、産道感染や母乳感染が起きる可能性が高いのです。つまり、胎児が産道を通らずに生まれてきて、誕生後には母乳も飲ませないことが対策になります。
陣痛に先だっての「予定帝王切開」を行うのは産道感染を予防するためです。
そして、生まれてきた子供には、生後半日以内に抗HIV薬(抗レトロウイルス薬)を与え、約6週間ほど投与し続けます。
HIVは非常に弱いウイルスであり、適切な対処で十分予防できます。また、母子感染のリスクやエイズの発症も、適切な治療を受けることである程度防ぐことができるといわれています。サポート制度もありますので、医師と相談しながら納得のいく選択をしてください。