慢性期の肝性昏睡(肝性脳症)には、どんな治療が行われるの?

2018/1/19 記事改定日: 2019/6/4
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

肝性昏睡とは、肝硬変などの肝臓の病気が重症化して肝臓が機能しなくなることで起こる昏睡状態です。肝臓の機能不全自体を治すことは困難になるため、慢性期の状態で進行を留めるための対症療法が重要になってきます。この記事で詳しく解説していきましょう。

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肝性昏睡はどんな病気?

肝性昏睡(かんせいこんすい)とは、重篤な肝障害によって肝機能が著しく低下したことが原因で、昏睡状態に陥っていくことを言います。肝性脳症(かんせいのうしょう)と呼ばれることもあり、肝硬変など慢性の疾患、または劇症肝炎などの急性の肝疾患などによって発症します。

通常、肝臓は人体に必要な栄養の吸収や代謝・合成、そして解毒や排せつまで、人が生命を維持していくのに欠かせない重要な機能をつかさどっています。

このように、生命維持に重要な機能をもつ肝臓が著しい機能不全に陥ることで、血液中にアンモニアなどの人体に有害な毒素が増加することで意識障害になると考えられています。

肝性昏睡の昏睡度による分類と症状について

肝性昏睡の重症度は、症状や意識レベルによって5つの昏睡度で分けられます。

昏睡度1
睡眠サイクルの昼夜逆転や興奮・抑うつ、身なりを気にしなくなるなど、躁鬱状態に見られるような症状が出ます。
昏睡度2
いつもウトウトしているような傾眠(けいみん)状態に陥り、必要なものを捨てたりするなどの異常行動、軽い意識障害が見られるようになります。また、伸ばした腕を支えられず、バタバタと羽ばたくような羽ばたき振戦と呼ばれる症状が出るのも特徴です。
昏睡度3
半分眠ったような嗜眠(しみん)状態になり、興奮、錯乱、光や音への怯えたような反応、筋肉のびくつきなどが出てきます。
昏睡度4
意識を失いますが、このときはまだ痛みや刺激への反応は見られます。
昏睡度5
深昏睡(しんこんすい)状態となり、痛みや刺激に対しても何の反応も示さず、完全な昏睡状態となります。

このように5段階ある肝性昏睡の症状ですが、実際には昏睡度1などの初期段階では異常に気づかず、知らない間に2以上の昏睡度に進行していることも多いといわれています。

慢性期の肝性昏睡への治療方法とは?

肝性昏睡の治療では、根本原因である肝臓の機能不全を取り除くことはできません。

そこで、病状が安定した「慢性期」と呼ばれる状態をできるだけ長く続けられるよう、症状の進行と再発予防のための対症療法を、継続的に行うことが重要になってくるのです。

代表的な対症療法には「食事療法」「高アンモニア血症の是正」「アミノ酸インバランスの是正」の3種類が挙げられます。

食事療法

身体を維持するのに必要なだけのカロリーとタンパク質を補うことで、良い栄養状態と筋肉維持を目指すものです。

高アンモニア血症の是正

身体にとって毒素であり肝性脳症の一因と考えられる血中アンモニア濃度が上がらないようにする治療法です。アンモニアの発生源となる便を貯めないよう、食物繊維を積極的に摂取したり、ラクツロースなどの薬剤を投与して便通を整えます。

アミノ酸インバランスの是正

肝機能の低下によって崩れたアミノ酸のバランスを整える治療法です。アミノ酸は大豆や青魚などの食品から摂取するか、経口薬を服用する方法もあります。

肝性昏睡は予防できる?

肝性昏睡(肝性脳症)は一度発症すると非常に重篤な状態に陥ることが多く、肝臓の病気で肝機能障害がある人は発症を防ぐために次のような対策を行いましょう。

  • タンパク質の摂りすぎに注意する
  • 医師からの食事指導は厳密に守る
  • 便通を整えて便秘を予防する
  • こまめに分補給して脱水を予防する
  • 多量の発汗を避ける
  • 嘔吐や下痢がある時は治療を受ける
  • 胃痛や胃もたれなどがあるときは治療を受ける

おわりに:慢性期の肝性昏睡には、症状にあわせた継続的な対症療法が必要です

肝性昏睡は、原因となる肝機能の不全を治すことは難しいため、慢性期を続けるための継続的な予防・対症療法が重要になります。段階と症状にあわせた治療が必要ですので、肝性昏睡のうち当てはまる症状があれば、すぐに医療機関を受診しましょう。

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