記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
鼻汁(鼻水)は、特に病気でなくても分泌されています。正常な状態であれば自然に飲み込まれますが、病気やアレルギーなどが原因で量が増えると鼻孔(鼻の穴)から出てきます。この記事では、黄色や緑、赤などの異常な色の鼻水の原因について解説しています。
正常な鼻腔では、1日約1~2リットルの鼻汁が分泌され、鼻の中に入ったウイルスや細菌を体外へ押し出すように排出しています。鼻水の大部分は、吸った空気に湿気を与えるために使用され、残りは自然に飲み込まれます。
健康なときの鼻水は水のように透明でさらさらとしています。鼻汁のことを日常的に意識することは少ないかもしれませんが、感染やアレルギーなどによって鼻水の量 や質、色が変化し、鼻漏(鼻水が鼻孔や咽頭へと流れ出ること)として認識されます。
すべてというわけではありませんが、鼻水に色がつくのは異物や血液、細菌などが鼻水と混じっていることの表れです。
また、異物や細菌などが混じると、鼻水は色だけでなく粘度も増してきます。粘度を増した鼻水は、鼻の中に溜まりやすくなり鼻づまりを引き起こすることにもなります。
黄色っぽい鼻水は、鼻水に含まれているウイルスや細菌、白血球の死骸が、白っぽい鼻水よりも増えている状態です。
風邪をひくと白っぽい鼻水から黄色っぽい鼻水へ移行していくケースも見られます。風邪の治りかけているサインともいわれますが、ここで油断をすると肺炎や気管支炎に移行することもあります。
緑色の鼻水が出る理由は、基本的には黄色っぽい鼻水とあまり差はありませんが、緑膿菌という抗生物質が効きにくい細菌が増えている可能性があります。
また、鼻水に膿が混じっているときも緑色になります。風邪のウイルスや細菌が鼻の周辺にある副鼻腔という空洞に入り炎症を起こすと副鼻腔炎を発症し、膿の混じった鼻水が大量に出ますので、副鼻腔炎のサインの可能性も考えられるでしょう。
赤っぽい鼻水が出る場合は、鼻水の中に血が混じっている可能性があります。鼻を強くかみすぎたり、鼻の粘膜が弱っているときは鼻血が出やすくなりますが、長期間続く場合は他の原因が考えられ、ときには悪性腫瘍が原因のこともあります。赤い鼻水が長時間出ているときは、できるだけ早く耳鼻咽喉科を受診しましょう。
鼻水は上で述べたように原因となる病気などによって色や性質が異なります。治療をしなくても問題ないものも多いため、症状が鼻水のみのケースでは病院に行かず市販薬などによるセルフケアで様子を見るのが一般的です。しかし、次のような鼻水は副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎など病院での治療が必要な病気が背景にある可能性がありますので、放置せずできるだけ早く病院を受診するようにしましょう。
急性副鼻腔炎の時に出る鼻水は、粘性があり黄色がかっているのが特徴です。これは、副鼻腔にたまった膿が鼻へ流れ出だし、鼻水に黄色い膿が混ざるためです。色は、症状が進み膿の量が多くなればなるほど緑色に近くなります。さらに、症状が4週間以上続く慢性副鼻腔炎(蓄膿症)になると、白っぽく粘りの強い鼻水が出るようになります。
風邪やアレルギー性鼻炎の場合は透明でサラサラとした鼻水が出るので、これらの違いが、見分ける際のひとつのポイントとなります。副鼻腔炎が自然治癒することはほとんどないため、できるだけ早く受診し早期治療を始めることが大事です。
鼻水の色は健康のバロメーターとなることもあります。鼻水が出ているときはまず色や粘り気をチェックし、気になる状態のときは早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。