記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/1/26 記事改定日: 2018/4/23
記事改定回数:1回
記事監修医師
前田 裕斗 先生
更年期障害になると、ほてりやのぼせ、集中力の低下や不眠といった不快な症状がみられます。こうした症状は、病院で治療しないと改善できないのでしょうか。この記事では、日常生活の中でできる更年期障害の対処法とリスクについて解説します。
更年期障害は、一般的に閉経期を迎える前後45歳から55歳ほどとされる更年期に、女性ホルモンが低下することであらわれるさまざまな症状を指します。
ホットフラッシュと呼ばれる突然のほてりやのぼせ、発汗や動悸、めまいや肩こり、慢性的なだるさといった身体的な症状から、強いイライラや集中力の低下、不眠や気分の落ち込みといった精神的な症状などが起こります。
更年期障害は男性にも起こるとされ、意欲の低下や憂うつ、倦怠感、不眠などの症状からうつ病と思い込むケースも少なくないと言われます。男性の場合、不眠の症状によって男性ホルモンがさらに減少し症状が悪化しやすいといわれています。ただし、女性も不眠によって精神的な症状が強まりやすいとされているため油断はできません。
骨粗鬆症とは、骨の密度が減少して、骨がスカスカな状態になる病気です。
骨は、体の成長に伴って太く長くなり、骨の量は20代で最も多くなります。年齢を重ねるごとに骨の量は少なくなりますが、ただ単に骨量が減少するだけでなく、骨の一部は日々新しい骨と入れ替わっています。
骨粗鬆症は、この骨の入れ替わりのバランスが崩れることで生じます。つまり、新しく作られる骨よりも排除される骨の方が多くなることで、結果として骨が少なくなってスカスカな状態となるのです。
女性ホルモンの一種であるエストロゲンは骨の生成を促す効果があり、更年期障害でエストロゲンの分泌が低下すると骨の生成が少なくなって骨粗鬆症になると考えられています。
骨粗鬆症になると骨折のリスクが高まり、特に背骨や股関節の骨折が生じやすくなります。若い人なら、骨折しても適切な治療とリハビリを行えば、比較的容易に元通りの生活を送ることができます。しかし、高齢者の場合には、一度骨折してしまうと、筋力の低下が生じ寝たきりになってしまうことも少なくありません。また、寝たきりの状態でいることは誤嚥性肺炎などの生命を脅かす病気を起こしやすく、生命予後が明らかに低下します。
このように、更年期障害の症状が改善した後であっても、適切な対処を行わなければ将来的な死亡率の上昇につながることもありますので注意が必要です。
更年期障害は精神面にもダメージを与える症状が出やすいため、つらい症状に悩んでいる最中はさらに気分が落ち込みがちですが、落ち込みというストレス自体も症状悪化の要因になることを自覚しておくことが大切です。
暗い気持ちが湧き上がってきたら、おいしいものを食べたり趣味に打ち込むなど、自分が心地良いと思う方法で心身をリラックスさせて気分を高める意識を持つことようにしましょう。
運動による発散が難しく体調が優れないときは、アロマの香りを取り入れた入浴でリラックスするなど、無理なく取り入れられる方法で心穏やかに過ごすと自律神経も整ってきます。また、朝日を浴びる習慣も、体内時計のリズムを整えるのに役立ちます。
規則正しい生活と気分を高めることが、更年期を上手に乗り切る有効手段といえるのです。
更年期障害の症状が重く、女性ホルモン量の低下が原因と考えられる場合は、婦人科等を受診してホルモン補充療法や漢方薬による治療を受けることをおすすめしますが、毎日の睡眠や食事(健康的な、バランスのとれたものにする)に気を付けるだけでも症状の緩和に繋がります。
更年期障害の症状は個人差が大きいものの、強く出やすい人は冷え性であることが多く、血液やリンパ液などのめぐりの悪さがホルモンバランスの崩れとともに自律神経を乱して症状を悪化させやすいといわれています。夏野菜など、身体を冷やす食材を避け、ショウガやネギ類といった体を温める働きを持つ食材を積極的に取り入れることが大切です。
また、自律神経に良いとされるビタミンB1やB12やビタミンC、ホルモンのためにはビタミンEと大豆イソフラボンなど、症状を改善する栄養素を多く含む食事を摂るように心がけ、食事はなるべく同じ時間に摂り、食べ過ぎないよう気をつけましょう。
更年期障害の症状を改善する方法のひとつに、生活習慣の改善があります。頭痛や動悸、ホットフラッシュが強く出ているときは激しい運動は控えるべきですが、慢性的な倦怠感や憂うつな気分のまま身体を動かさずにいると、冷え性の場合は特にめぐりの悪さを助長することにつながります。
そうなると、自律神経を狂わせて代謝機能がさらに低下し、便秘やむくみといった不快な症状まで招いてしまう可能性があります。
少しでも身体を動かしたほうが血流がよくなりますし、不眠に悩まされている場合は、運動による適度な疲労感から寝付きが良くなって睡眠の質を高めることもできます。更年期障害において、不眠は心身両面の不調を招く元凶となります。良い眠りを得ることが、症状改善のカギになります。
更年期障害の根本の原因は、閉経に伴う女性ホルモンの減少によるものです。女性ホルモンにはエストロゲンとプロゲステロンがありますが、この両方が減少します。
このため、更年期障害の根本の治療はエストロゲンとプロゲステロンを補充する「ホルモン補充療法」になります。
ホルモン補充療法は症状改善に優れた効果が期待できますが、一方でホルモンを人工的に補充する治療ですから副作用も出やすい一面があります。主な副作用は、吐き気や乳房の張りなど軽度なものですが、中には血栓を生じて脳梗塞や心筋梗塞を生じることもあり、治療は慎重に行う必要があります。
また、エストロゲン単独の使用は、子宮癌のリスクを上昇させ、エストロゲンとプロゲステロン二剤の併用でも乳癌のリスクがわずかに上がることが知られています。
このため、乳癌や子宮癌、血栓症を起こしやすい人はホルモン補充療法を行うこうことができません。
更年期障害の治療では、ホルモン補充療法の他に、漢方薬が使用されることがあります。漢方薬には更年期障害を根本から治す効果はありませんが、不快な諸症状を改善する効果が期待できますので、ホルモン補充療法と併用されることが多々あります。
特に多く使われるのは、のぼせや疲労感、苛立ちなどに効果がある加味逍遥散、軽度なほてりに効果がある温経湯、冷えや頭痛に効果がある五積散などが挙げられます。
漢方薬は市販されているので、自分で購入することができます。しかし、漢方薬は自分の体質に合わないと症状の改善が見られず、漫然と飲み続けることで副作用を生じることもあります。ホルモン補充療法を受けている人は、自己判断で服用せず、必ず医師に相談してから服用しましょう。
更年期障害はつらい症状が続きますが、日常生活や食事を改善することで症状を和らげることができます。まずは生活習慣の見直しから対策を始め、それでもつらいときは婦人科の医師に相談してホルモン補充療法などの治療を検討してみてください。