記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/1/26
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
O157(腸管出血性大腸菌)は、感染すると下痢や腹痛を発症し、その後血便が出ることもあります。子供や高齢者は特に感染しやすいとされているため注意が必要です。この記事ではO157(腸管出血性大腸菌)を予防するために、外食時に注意すべきことを紹介しています。
O157は、腸管出血性大腸菌を引き起こす代表的な細菌です。O157は人間の腸内でベロ毒素という毒素を放出し、これが血液中に入りさまざまな症状を引き起こします。合併症としては、溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症(けいれんや意識障害)が挙げられます。非常に強い感染力が特徴で、100個程度のO157が身体の中に入っただけでも発症します。O157は家畜などの糞便中にみられるため、糞便で汚染された水や食物を介して、人の口に入り感染します。
O157感染症の代表的な症状は下痢、腹痛です。感染者の約半数は、4~8日の潜伏期間ののちに、激しい腹痛を伴った下痢を頻繁に起こし、まもなく血便が出ます。感染した人の咳やくしゃみ、汗などから感染する空気感染や、感染者と触れ合うことで感染する接触感染はありません。
人から人へ感染する場合は、感染者の便に含まれた大腸菌が直接的もしくは間接的に口に入る場合のみです。排便後、食事の前に手洗いを十分にしなかった場合などが一例として挙げられるでしょう。
2017年8月には惣菜店のポテトサラダが原因で、また別の地域でも焼肉店、ピザ・パスタチェーン店においてO157が確認されました。
さらにさかのぼると、2016年7月には滋賀県の飲食店の客がO157感染症と判断されましたが、この原因は、野菜の洗浄などに用いられた井戸水と見なされました。
また2012年には白菜浅漬、2014年には花火大会の露店で販売された冷やしキュウリ、2016年にはキュウリのゆかり和えで、それぞれO157感染が確認され、これらの事故を受けて、栽培過程で野菜にO157が付着する可能性が指摘されるようになりました。
有機野菜の人気が高まり、牛糞堆肥が再評価されていますが、牛糞の発酵が足りなければ、O157が残存する可能性を伴います。O157が付着しているかもしれない野菜を生食する場合は、丁寧に3回以上野菜を洗うことで付着している大腸菌を大きく減らせるとの報告があります。
また、厚生労働省は、生食用の野菜や果物について流水で十分洗浄し、小児や高齢者や抵抗力が弱っている人が口にする場合には、次亜塩素酸ナトリウム等で殺菌した後に流水で十分すすぐことを奨めています。この次亜塩素酸ナトリウムはインターネットなどで購入可能です。
惣菜や外食でのO157感染を100%防ぐことは難しいとされます。O157による食中毒が特に多い夏から秋(とくに7月~8月)にかけては、罹患の確率が高い子供や高齢者は、購入した惣菜や外食を控えることでリスクの軽減を図りましょう。また、店舗で購入した惣菜は、保冷剤を使って持ち運び、なるべく早く食べるといった工夫も大切です。その他、手洗いの重要性も忘れないようにしたいものです。
なお「(食中毒菌を)付けない、増やさない、殺す」3原則を徹底もしましょう。「付けない」は、手や調理器具の消毒により、食材の汚染の危険性を払しょくすることです。「増やさない」とは、細菌が増殖しやすい環境に食材や食品を放置しないこと、「殺す」は加熱による殺菌を意味します。
O157の食中毒というと生の肉類を連想しがちですが、惣菜や外食、生野菜など多くの食物にリスクが潜んでいます。手や野菜を念入りに洗浄することでも危険性を軽減させることはできるので、普段から意識して予防策を講じましょう。