2型糖尿病の原因と合併症のリスク ― 食事療法で発症を防ごう!

2018/1/31 記事改定日: 2018/8/23
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

2型糖尿病とは、生活習慣病などが原因で起こる糖尿病であり、血糖コントロールを怠り血糖値が高い状態が続くと、さまざまな合併症を発症します。この記事では、糖尿病三大合併症を紹介していきます。またあわせてその他の合併症も紹介しています。

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2型糖尿病とは!?

糖尿病とは、インスリンの分泌量が不足してしまったり、インスリンの作用が正常に働かなくなってしまうことで発症する病気です。

ブドウ糖は、私たちの活動に必須のエネルギーです。食事をすると、糖質は分解されてブドウ糖になり、血液で全身に送られます。その後インスリンが細胞内や脂肪細胞へのブドウ糖の吸収をサポートするのです。

しかし、インスリン分泌量が不足したりや働きが阻害されてしまうと、血液中のブドウ糖が細胞に吸収されないため血液中に含まれるブドウ糖が増加していきます。その状態を放置すると、血液中のブドウ糖はどんどん増えていき、血糖値は常に基準値を超えてる状態が続いてしまうことになるのです。このような血糖値が高い状態(高血糖状態)のことが糖尿病であり、進行すると身体の至る所に悪影響が出てきます。

糖尿病には、1型糖尿病と2型糖尿病があります。1型糖尿病は、主にウイルス感染や自己免疫異常で膵臓のβ細胞が破壊されることで発症し、10代によくみられます。また、原因不明で発症することもあります。
2型糖尿病は、食べ過ぎや運動不足、肥満などの生活習慣が原因で、インスリンの分泌量が減ったり、インスリンの作用が効きにくくなってしまうものです。改善には、根本的な生活習慣の改善が必要です。

糖尿病のほとんどが2型糖尿病であり中高年に多くみられます。ただし最近では、若年層の糖尿病も増えています。

2型糖尿病の原因とは!?

2型糖尿病は、血糖を下げる働きを持つインスリンの分泌量が減ったり、インスリンの働きが低下することによって発症します。
インスリンの分泌が低下する要因は主に遺伝であると考えられています。特に日本人はインスリンの分泌能が欧米人と比べて半分程度であり、糖尿病を発症しやすい人種なのです。

また、インスリンの働きが低下する要因は、遺伝も関与していますが、肥満や高脂肪食、運動習慣、ストレスなどの生活習慣や加齢であるとされています。これらの要因が重なることで、インスリンの働きが悪くなり、元からインスリンの分泌量が少ない人は相まってインスリンの十分な作用を得ることができなくなるのです。

そして血糖が高い状態が続くと、インスリンの分泌量や働きが低下することもわかっており、更なる高血糖を招くという悪循環に陥ります。

糖尿病の三大合併症

糖尿病の三大合併症は、と網膜症、腎症、神経障害の3つです。
糖尿病性網膜症は、網膜に広がる血管に傷がついたり詰まってしまうことで起こった出血や、血管から漏れたたんぱく質などが網膜に張りつき、網膜剥離を引き起こす病気です。悪化すれば、失明につながる可能性があります。

糖尿病性腎症は、高血糖が続くことで腎臓にある血管の流れが悪くなり、腎臓の機能低下を招くものです。腎臓は、血液中の老廃物を尿として排出するため、症状が悪化するとたんぱく尿が検出されるようになります。重症化すると腎臓の機能不全に陥り、人工透析が必要になります。

糖尿病性神経障害は、高血糖によって神経線維に障害が起こる病気です。痛みなどを伝える神経が障害され、手足の感覚がにぶくなり、しびれたりします。感覚障害が進行すると足などに傷を負っても気づかなくなるため、傷口に感染症を起こしやすくなってしまいます。感染症から壊疽(えそ)を発症してしまうと、切断をしなければいけなくなってしまうこともあります。

三大合併症以外にも深刻な影響がある!?

2型糖尿病になると、がんを発症しやすくなるといわれています。主には、膵臓がんや肝臓がん、大腸がんになりやすいとされています。

2013年に日本糖尿病学会と日本がん学会が発表した10年に渡る追跡調査の報告によれば、糖尿病患者はそうでない人と比べて大腸がんに1.4倍、肝臓がんに1.97倍、膵臓がんに1.85倍、発症のリスクが高まることが指摘されています。インスリンの過剰な分泌によるがん化や運動不足や乱れた食生活などが発症要因として想定されています。

また、糖尿病は歯周病や認知症にも関係しています。糖尿病患者はそうでない人に比べ、歯周病にかかる頻度や悪化しやすい傾向があるとされ、高齢の糖尿病患者は、そうでない人に比べ約2~4倍の確率で認知症発症の可能性が高まるといわれています。歯周病や認知症を発症すると、血糖のコントロールに悪影響を及ぼします。その他、不眠症やうつ状態を発症しやすくなるともいわれています。

2型糖尿病の予防や改善に役立つのは、生活習慣の見直しです。食事では、自分に適切なエネルギー量を摂ること、炭水化物やたんぱく質、脂質などをバランスよく食べること、1日3回規則正しく食べることなどがあります。運動では、ウォーキングなどのような、軽い運動から始めましょう。無理なく続けやすい目標設定が、継続と習慣改善のポイントです。

2型糖尿病の食事療法

2型糖尿病では投薬治療も大切ですが、普段の食事に注意して血糖コントロールを行ったり、合併症の併発を防ぐための食事療法が非常に重要になってきます。

食事療法の基本は、1日の摂取カロリーを決め、たんぱく質や脂質、炭水化物などの割合を管理することです。
摂取カロリーは「標準体重×身体活動量」で決められます。身体活動量は三段階に分かれ、デスクワークが主である人は25~30kcal/kg、立ち仕事が主である人は30~35kcal/kg、力仕事が多い人は35kcal/kgとされています。

また、全カロリーのうち、約60%は炭水化物に当て、たんぱく質は1.0kg/kgを基準として、残りのカロリーは脂質で補うようにします。
しかし、合併症である腎不全が進行している場合にはさらにたんぱく質の制限などを行う場合もありますので、食事療法は必ず医師や栄養士の指導の下で行うようにしましょう。

おわりに:2型糖尿病は生活習慣の改善で予防できる!発症後も合併症を回避するために生活習慣の見直しが必要。

2型糖尿病は、さまざまな合併症を引き起こすリスクがあります。できるだけ健康な心身で人生をおくれるようにするために、普段からの生活習慣にきをつけ、血糖コントロールに努めましょう。また、2型糖尿病になってしまった場合は専門家の指導のもと治療を続けていく必要があります。医師や管理栄養士保健師と相談し、自分にあった治療目標と治療計画を作りましょう。

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