記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/2/21 記事改定日: 2018/3/28
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
ぎっくり腰とは、急性腰痛症などの診断名がある、腰に激しい痛みが起こる障害です。症状の度合いはさまざまですが、立ち上げれないくらい重症になることも少なくありません。この記事では、そんなぎっくり腰を予防する方法(筋トレやストレッチなど)について解説しています。
腰痛の代表的なものが、「ぎっくり腰(腰仙部挫傷:ようせんぶざしょうや急性腰痛症など)」です。ぎっくり腰は、重いものを持ち上げたときなどのほか、日常生活の何げない動作、たとえば顔を洗うときの中腰の姿勢、咳やくしゃみ、椅子に腰かけたまま後ろのものを取ろうとしたときや軽くゴルフの素振りをしたときなどにも起こります。突然激痛に襲われて動くことも立ち上がることもできなくなってしまうこともあります。
本来ぎっくり腰は急性の一時的な腰痛ですが、放置してしまうと慢性の腰痛に進んだり、何度も再発してしまうことも少なくありません。医師の治療を受けて完治させたあとは、再発を含めた予防策に取り組むことが重要になります。
ぎっくり腰の予防には、腰を支えるための筋トレや、筋肉や靭帯を柔軟にするストレッチが適しています。腰に負担をかけない水中ウォーキングなどアクアサイズも良いとされ、もっと手軽にできるものとしてウォーキングやスローピング運動(坂道や階段を昇り降りする簡単な運動)も効果的といわれています。
体幹を鍛える筋トレは、ぎっくり腰の予防に効果的と言われています。胴体の骨格筋である体幹筋は、表層にある大きな筋肉群のグローバル筋と、腰椎に直接付いており脊椎を安定させるローカル筋から構成されているのですが、ローカル筋は脊椎を正しい位置に収めるコルセットのような役割を果たしています。つまり、腰の負担を軽減させるには、ローカル筋の筋トレを行い、背骨のS字カーブを維持することが非常に重要なのです。
ローカル筋を鍛える筋トレを、いくつかご紹介します。
うつ伏せになって肘と両膝を床につけ、肘は肩の真下、両足は腰幅に開きます。片足を上げた状態で30秒キープします。左右両方の足で行い、2〜3セット行いましょう。
四つん這いになり、手は肩の真下に来るようにし、両足を腰幅に開きます。右足と左腕を床と平行に上げ、30秒キープします。今度は左足と右腕でも行い、2〜3セット行いましょう。初めのうちは、足だけ上げるのでも構いません。
ストレッチはぎっくり腰の予防・改善に非常に効果的と言われています。いくつかおすすめのストレッチをご紹介します。
1.床にL字に座る(膝はまっすぐ投げ出し、上体は立っている)
2.膝を曲げずに上体を前へ倒す。手は伸ばせるところまで伸ばし、腰が突っ張ってきたところで止める
1.仰向けで寝て膝を抱え、胸の方へ引き寄せる
2.伸びを感じたところで止める
そもそも、ぎっくり腰の痛みの多くは、腰の筋肉や関節まわりで起こる炎症が原因だと考えられています。
痛みの理由のひとつは、腰を支える靭帯(じんたい)や筋肉が急な負担によって傷ができてしまうことです。また、腰椎の関節やそのまわりの膜(関節胞)の損傷、椎間板(軟骨)が変形して神経を刺激・圧迫することからも起こります。
中高年の場合には加齢や運動不足から腰を支える筋肉が弱くなり、椎骨に限局的な負荷がかかってしまうようになると、腰の骨や関節に変形が起こってしまうこともあります。このような変形もぎっくり腰の原因なる可能性があり、症状もひどくなりがちなため注意が必要です。
関節や椎間板の損傷、変形は専門外来での治療が第一ですが、運動不足による筋緊張からのぎっくり腰は、ヨガによって予防できる可能性があります。ヨガのポーズは筋肉の緊張を緩めつつ、必要な筋肉を鍛えてくれる効果があります。また、ヨガは深呼吸しながら行うものですが、深呼吸は腰やお腹の筋肉を使うものであり、姿勢の改善や内臓の機能を向上させる効果も期待できるため、その点からもぎっくり腰の予防に有効と考えられます。
ぎっくり腰の予防におすすめのポーズは、ワニのポーズです。腰をひねることで筋緊張が解け、疲労が溜まりにくくなります。以下のようにポーズをとってみてください。
1.仰向けに寝て、両腕は真横に伸ばす
2.息を吸って、吐く息で右足を左へ倒す。このとき顔は右に向け、腰をひねる
3.2を5回程度行ったら、反対側も同じように行う
上記の運動で痛みが出たり、痺れなど別の症状が現れる場合はすぐに運動を中止してください。トレーニングメニューは、基本的には医師と相談しながら、自分にあったものを作ってもらうのが理想です。
これまで、ぎっくり腰の予防に効く筋トレやストレッチなどの運動をご紹介してきましたが、常にコルセットをして腰を安静にするのは、予防につながるのでしょうか?結論から言えば、むしろ逆効果です。コルセットは脊柱の不安定による腰痛には効果的ですが、ずっとコルセットを着けていると腹筋が弱くなり、腰への負担が大きくなります。また、かえって痛みに過敏になるリスクも指摘されているのです。
ぎっくり腰を予防するには、安静にし続けるのではなく、毎日の簡単な筋トレやストレッチなど運動することが大切です。無理をせず自分のペースで運動を続けましょう。ただし、痛みが増加したり痺れなどが出たときは、すぐにかかりつけ医に相談してください。