中高年男性に多い「溢流性尿失禁」の症状・原因・治療法

2018/2/2

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

溢流性(いつりゅうせい)尿失禁とは、尿をしたくても尿が出にくくなるうえに、残尿が自分の意志と関係なく漏れ出てしまう病気です。中高年の男性に多いといわれていますが、何が原因で発症するのでしょうか。この記事では、溢流性尿失禁の原因や症状、治療法について解説しています。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

溢流性(いつりゅうせい)尿失禁とは?

溢流性尿失禁とは自分の意志で尿を出したいのに尿が出ない、なのにちょろちょろと自分の意志とは無関係に尿が漏れ出してしまうことです。
一般的に男性に多い病気といわれていますが、女性でも発症者がいないというわけではあません。
溢流性尿失禁は原因が人によって違います。そのため、発症の原因をつきとめ、原因にあわせた対処や治療が必要になります。

溢流性尿失禁の原因と問題点

溢流性尿失禁は尿が上手く出ない尿閉という状態になり、膀胱内に尿がたくさんたまって限界を超えてしまうことによって引き起こされます。
原因は男性と女性では異なります。

男性の場合は、重症の前立腺肥大症の場合に多く見られます。
前立腺肥大症の罹患率を見てみると、50歳で30%、60歳で60%、70歳で80%、80歳では90%に上ります。このように、前立腺肥大症は高齢になるにつれて罹患者の割合が多くなることから、男性の溢流性尿失禁の発症数も高齢になるにつれ多くなるといわれています。

女性の原因として考えられるのが子宮系の疾患です。特に子宮筋腫が代表的なものといえるでしょう。筋腫が大きくなることによって膀胱の出口が圧迫されて尿閉となり、溢流性尿失禁となるといわれています。
さらに直腸癌や子宮癌の手術後に膀胱周囲の神経の機能が低下してしまうことも、溢流性尿失禁を引き起こしてしまう原因になることがあります。

溢流性尿失禁を引き起こすと、症状以外にも下記のようないくつかの問題が発生します。

外出を控えて、引きこもりがちになる

自分の意志と反して尿が出てしまうため下着を汚すことが増えてしまい、外出を控えてしまい、溢流性尿失禁を契機に引きこもりとなる可能性があります。下着を汚すことだけでなく、常に尿意を感じるため外出先でトイレが無い可能性があるという不安を感じ、外出を控えがちになってしまうこともあります。

夜間頻尿による睡眠障害

夜間も頻尿になるため、夜間も尿意によってトイレに起きてしまったり、眠っている間に下着を濡らしてしまい目が覚めてしまい、睡眠時間が短くなってしまいます。ひどいときには睡眠障害を引き起こすこともあります。

どんな治療法があるの?

溢流性尿失禁は原因によって治療方法が異なり、またできるだけ早く治療をすることが推奨されます。
その理由として、尿が膀胱内に長く溜っていることにより細菌が繁殖し、細菌感染をしてしまう可能性があるからです。

低過活動膀胱であった場合は、膀胱機能の改善を図り、膀胱内の残尿をできるだけ減らす治療が必要になります。尿道の圧を低くして排尿しやすくするα1-遮断剤や膀胱の圧を高くするコリン作動薬などによる薬物療法が用いられます。

内服療法でも膀胱に残尿が多く残ってしまう場合は、カテーテルを用いて尿を自分で人工的に排出させる自己導尿が行われます。あわせて便秘によって腸が膨張して尿道が圧迫されている場合は、便秘に対する治療も並行して行われます。

ただし、前立腺肥大症など溢流性尿失禁となる病気が明らかになっている場合にはその病気の治療が優先されます。
前立腺肥大症の薬物療法として使われるα1-遮断剤には前立腺を縮小させる作用はありませんが、尿を排出しやすくする作用で溢流性尿失禁の症状改善が期待できます。また、前立腺を縮小させるために抗男性ホルモン剤が使用されることもありますが、性欲低下などの副作用があることは留意しておく必要があるでしょう。
これらの治療でも効果が無い場合に行われる手術療法ではレーザーや高温度療法などを用いた低侵襲治療、経尿道的前立腺切除術などの手術が行われます。いずれも重症の場合に行われることが多く、軽症では経過観察で済ませることもあります。

おわりに:男性、女性に限らず、排尿のトラブルがあるときは早めに病院に相談しよう

男性に多いといわれている溢流性尿失禁ですが、女性でも発症する可能性は大いに考えられます。
手術や薬剤などで改善する可能性はありますが、自己導尿などの対処が生涯必要になることもあるのです。また、早期の治療が遅れると感染のリスクもあります。男女に限らず、排尿や尿漏れのトラブルがあるときは早めに病院を受診しましょう。

関連記事

この記事に含まれるキーワード

前立腺肥大(8) 尿失禁(9) 子宮がん(7) 子宮筋腫(16) 排尿障害(19) 尿閉(7) 直腸癌(3) 溢流性尿失禁(1)