記事監修医師
日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科
川俣 綾 先生
2018/2/14
記事監修医師
日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科
川俣 綾 先生
舌炎は舌に発症する炎症の総称です。主に胃の不調や舌についた傷が原因で発症するものですが、特定の栄養素の不足や病気がきっかけで発症することもあります。この記事では、栄養素や病気が原因の舌炎について解説します。
舌炎は、舌に炎症が起きているものの総称です。舌炎を発症する内科的な原因として、特定の栄養素の不足や自律神経失調によるものがあります。また、先天的な原因や、外からの刺激で舌に傷がつき、そこから感染して舌炎を発症することもあります。
舌炎の炎症は、舌全体や口の中の粘膜に広がっているものから、舌の先端のみ、舌の中央のみなど局所的なものまでさまざまです。舌が割れたような症状があらわれますが、そこから感染を起こすと赤く腫れて、かなり強い痛みを伴うこともあります。痛みがひどくなると、舌を動かすたびに痛みが増すため、食事や会話をすることさえままならなくなることがあります。このような場合、生活に支障が出てしまうため、適切な治療を行うことが必要です。
舌は他の組織に比べて代謝がさかんな部位のため、栄養素が不足するとすぐに何らかの症状が出る特徴があります。さまざまな栄養素のうち、舌炎に関係するものは亜鉛、葉酸、ビタミンB12です。亜鉛は体に欠かせない栄養素で、不足すると皮膚や消化器の病気を引き起こします。中でも口腔内の症状が起こりやすいと言われており、味覚障害や舌炎といった症状があらわれます。葉酸とビタミンB12はどちらも体内では作ることができないビタミンで、不足すると口腔内の症状が出ることが明らかになっています。これらの栄養素が不足すると、舌がしみたり、熱をもったりする感じがしたり、舌乳頭が萎縮したり、舌が乾燥するといった症状が出てきます。
細菌感染が原因で舌炎を発症することもあります。そのひとつがカンジダ菌です。カンジダ菌は普段から体内に存在している菌ですが、体調が悪くなるとカンジダ菌が原因で舌炎を発症することがあります。カンジダ菌で舌炎を発症する場合、舌などの口腔粘膜が赤くただれ、さらにその上から白い膜のようなものができます。
また、溶連菌の感染で発症することもあります。この場合、舌に赤いボツボツができるイチゴ舌と言われる症状がみられます。ひどくなると痛みが強くなって物を飲み込むことが難しくなったり、呼吸困難を引き起こしたりする恐れがあります。
A群コクサッキーウイルスによる感染では、口腔内に水泡ができることが特徴です。水泡が破れるとただれて潰瘍となり、かゆみや痛みが出ます。手足口病の原因となるコクサッキーA16ウイルスやエンテロウイルス71の感染を起こすと、口の中に水疱性の発疹が出ます。この発疹は口の中だけでなく手や足にもできますが、手足の発疹は痛みがないのに比べて、口の中の発疹はこすれて痛みが出ることがあります。
舌炎は外傷や胃の不調に加えて、亜鉛や葉酸、ビタミンB12といった栄養素が不足することでも発症します。これらの栄養素が不足すると、味覚障害を引き起こす可能性もあるため、普段から不足しないよう意識することが大切です。