記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/2/14 記事改定日: 2020/7/9
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
貧血には様々な種類があり、それぞれで原因が違います。この記事では、ビタミンB12と関連がある巨赤芽球性貧血について、主な症状や原因、悪性貧血との違いを解説しています。さらにそれぞれの治療法を紹介しますので参考にしてください。
巨赤芽球性貧血とは、正常な血液を作ることができなくなることで起こる貧血です。ビタミンB12と葉酸が欠乏することで起こります。
細胞が増殖するには、DNAの合成を行わなくてはなりません。その際、必要になるのがビタミンB12と葉酸です。ビタミンB12または葉酸が欠乏すると細胞分裂がうまくいかなくなります。
血液は骨髄中で作られていますが、ビタミンB12と葉酸が不足すると、赤血球になる前の未熟な細胞「赤芽球」が大きくなります。大きくなった赤芽球を巨赤芽球といいます。
巨赤芽球からできた赤血球も大きくなりますが、赤血球になる前に壊れてしまうため貧血が起こるのです。
同じように白血球や血小板も未熟な細胞になってしまい壊れやすくなり、すべての血球が少なくなります。これが巨赤芽球性貧血です。
巨赤芽球性貧血では、一般的な貧血症状と同様に、動悸、息切れ、全身の疲労感、疲れやすくなる、頭が重いなどが起こり、加えて、下記の症状があらわれます。
さらにビタミンB12が欠乏している場合では、四肢がしびれる知覚障害や、歩けなくなる運動失調、意識混濁や興奮などの精神障害を起こすこともあります。
悪性貧血とは巨赤芽球性貧血の一種で、自己免疫の異常が原因で起こるものです。かつては原因がわからず、治療法もない病気だったため「悪性」とついていますが、現在では原因も判明し、治療が可能になりました。
悪性貧血の原因は、慢性萎縮性胃炎という病気です。慢性萎縮性胃炎は自己免疫の異常で胃の粘膜に白血球が集まり、常にじわじわとした慢性的な胃炎が起こることで発症します。炎症が長期間続くと、胃酸を出す胃腺という部分が収縮して、胃の粘膜が薄くペラペラになります。これが萎縮性胃炎です。
萎縮性胃炎になると、胃から分泌されるキャッスル内因子が不足します。キャッスル内因子は食べ物から摂取したビタミンB12を吸収するために必要なため、キャッスル内因子の不足はビタミンB12の欠乏を招き、巨赤芽球性貧血を発症します。
巨赤芽球性貧血が疑われるときは次のような検査が行われます。
巨赤芽球性貧血の診断に欠かせないのは血液検査であり、ヘモグロビン値を調べることで貧血の有無や重症度を評価することができます。巨赤芽球性貧血では形が歪な赤血球が多く見られるようになるため、採取した血液を顕微鏡で観察します。
また、貧血には様々な原因がありますので、巨赤芽球性貧血が疑われるときは血中のビタミンB12や葉酸の濃度が調べられます。
ビタミンB12や葉酸は消化管から血液中に吸収されるため、消化管に何らかの病気があると巨赤芽球性貧血を発症する可能性が出てきます。巨赤芽球性貧血が疑われるときは、胃や腸に病気がないかCTなどによる画像検査や内視鏡検査などが行われることがあります。
巨赤芽球性貧血の治療法では、ビタミンB12と葉酸の不足を補います。まずビタミンB12と葉酸のどちらが不足して起こっているのかを血液検査によって調べます。
ビタミンB12は食事から摂りやすい栄養素のため、とても偏った食生活を送っていないのであれば、欠乏することはあまりみられません。そのため、ビタミンB12吸収異常によって起こっている可能性が高いと考えられます。
治療ではビタミンB12を注射点滴で投与し、欠乏を補います。最初の2週間は連日(または週2~3回)投与し、その後は2~3カ月に1回投与していきます。ビタミンB12の吸収異常を根本的に治療することはできないため、定期的な補充の継続が必要ですが、症状の改善は可能です。
葉酸欠乏の場合は、偏った食生活やアルコールの摂りすぎなどが葉酸が欠乏する原因として考えられます。食生活や生活習慣を改善しながら、葉酸を経口投与して補充し治療します。葉酸の経口投与は数週間続ければ改善します。
妊娠中は葉酸必要量が増えますので、摂取量が少ないと欠乏することがあります。そのため意識的に葉酸を豊富に含む食べ物をとることを心がける必要があります。葉酸は、ほうれん草やレバー、イチゴなどの果物、豆類に多く含まれています。また、熱に弱いため調理法にも気をつけましょう。
ビタミンB12欠乏が原因の巨赤芽球性貧血と同じ治療を行うことで症状を改善させることができます。ただし、悪性貧血の原因である慢性萎縮性胃炎は、胃癌の発症リスクを高めるため、内視鏡検査などで経過を観察することが大切です。
巨赤芽球性貧血はビタミンB12や葉酸が不足、悪性貧血は慢性萎縮性胃炎が原因で起こります。治療や食生活改善で不足している成分を補うことで、症状を改善することが可能です。貧血症状に気付いたら、まずは内科を受診して血液検査を行い、原因をきちんと探ってもらいましょう。