記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/2/14 記事改定日: 2019/4/18
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
多量の発汗や下痢などのときは、水分だけでなく塩分も多く失われます。塩分が過度に失われると低ナトリウム血症を発症し、最悪のケースでは命を失うこともあるのです。この記事では、低ナトリウム血症について解説しています。
通常塩分不足は、普通の食事をしている健康な人であればほとんど起こりません。しかし、炎天下の中で長時間運動をして、大量の汗をかいたりすると塩分が不足してしまう場合があります。
塩分不足によって起こりうる症状としては、嘔吐や下痢、血圧の低下等が挙げられます。血圧低下は、塩分が不足することで、体内の浸透圧のバランスが崩れてしまうことで起こります。
また、重症化すると、筋肉の痙攣を引き起こしたり、昏睡状態になったり、最悪の場合には死に至ることもあります。初期段階では、眠気や錯乱症状が発症しますので、塩分不足で眠気等が発生した場合には早急に処置をしましょう。
低ナトリウム血症とは、体内のナトリウム濃度が過度に低くなった状態のことです。
大量の水分を摂って体内の水分量が多くなり過ぎると、相対的にナトリウム濃度が低くなります。
低ナトリウム血症はこのように水とナトリウムのバランスが狂った状態のことを指します。
腎臓の機能低下は低ナトリウム血症の原因のひとつです。
腎臓は、余分な水分を排出する機能を持っていますが、その機能が低下することで水分排出がうまくなされず、少量の水分補給でも体内の水分量が増加してしまうのです。
慢性の下痢や激しい嘔吐等で体液が失われている場合にも注意が必要です。失われた体液を水分の補給だけで補ってしまうと、ナトリウムに比べて水分量が増加してしまい、ナトリウム濃度が下がってしまいます。これら以外にも、抗利尿ホルモン分泌異常症候群(SIADH)やアジソン病が低ナトリウム血症の原因になることがあります。
低ナトリウム血症では以下のような症状が見られます。
血液中のナトリウム濃度が急激に低下すると重症化する場合があるので注意が必要です。重症化すると脳に障害が起こり、最悪の場合には死に足ります。特に高齢者や小さい子供は注意が必要です。低ナトリウム血症の重症化が疑われる場合には早急に病院を受診しましょう。
低ナトリウム血症は、血中ナトリウム濃度を計測することで診断しますが、発症の原因は複数あり特定が困難です。どのような原因によってナトリウム濃度が下がっているか、慎重に状況を検討して判断します。
多くの場合、軽度の低ナトリウム血症は、水分の摂取量を1日約1リットル以下にすることで治療します。原因によっては、ナトリウム溶液の投与や、体液排出を促進する利尿剤の投与を行います。
治療は数日間かけてゆっくりと行います。通常は、これらの治療によって体内のナトリウム濃度は元に戻ります。
重度の低ナトリウム血症の場合は、薬剤投与や食塩水等の点滴を行い、血中のナトリウム濃度をゆっくりと上げていきます。ナトリウム濃度をゆっくりと上げていくのは、脳は血中のナトリウム濃度の変化の影響を受けやすく、急激に濃度が上昇すると脳へダメージが起こってしまうためです。繰り返しますが、原因によって治療は細かく異なり、こちらに述べたものはその一例です。
低ナトリウム血症は、心不全や肝硬変などの病気によって引き起こされることもありますが、摂取量の減少が原因となることも少なくありません。
近年では減塩が健康に良いとのイメージが強くなり、極端な減塩をすることで低ナトリウム血症を発症するケースもあります。食塩の一日の目標摂取量は7g以下ですので、この数値を大幅に下回るような食生活は危険です。
また、特に下痢や嘔吐、大量の発汗などの症状がある場合にはナトリウムの排泄量が増加して低ナトリウム血症になることもあります。これらの症状がある場合はいつもより多めの水分を摂ると同時に、電解質が含まれた経口補水液を飲用するようにしましょう。
日本では、塩分の多い調味料を多用する食文化から、塩分が不足することはあまりありません。日常生活で低ナトリウム血症になるリスクが高いのは、大量の汗をかいたときや、激しい下痢のときです。大量に汗をかいたときや激しい下痢のときには、スポーツ飲料などでこまめに水分補給し、塩分不足対策をしてください。もし、症状が悪化してきた場合は、すぐに病院を受診しましょう。