記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
RSウイルス感染症は、2歳までの子供のほとんどが経験するといわれている微生物感染症です。何度も感染し、軽症で終わることが多いといわれていますが、重篤な合併症を発症するリスクもあります。この記事ではRSウイルス感染症の合併症とRSウイルス感染症治療薬「シナジス®」について解説していきます。
RSウイルス感染症とは、RSウイルスの感染によって発症する呼吸器の疾患です。年齢に関係なく発症しますが、年齢が低いほど重症化しやすいため、乳幼児は注意が必要です。生後1歳までに半数が、2歳までにほぼ100%の子供が感染するといわれています。また、感染力が非常に強く、免疫がなかなかできないために、何度も感染しますが、感染回数が増えるほど症状は軽くなる傾向にあります。
発熱や鼻水等の軽い鼻かぜ程度の症状が数日続き、軽症で済む場合が多いですが重症化すると細気管支炎や肺炎になる場合があります。咳がひどくなったり、ゼーゼー、ヒューヒューという呼吸音がする場合には、細気管支炎の可能性があるので注意が必要です。
潜伏期間は2~8日であり、はじめて感染した乳幼児の7割は軽症で数日で徐々に回復しますが、3割が咳の悪化や呼吸困難等の症状がでるといわれています。
RSウイルス感染症の治療薬に、「シナジス®」というという薬があります。シナジス®には、RSウイルスの増殖を抑制し、重症化を防ぐ効果があります。
シナジス®は、モノクローナル抗体です。モノクローナル抗体とは、特定の分子に対する抗体を医薬品に活用したものです。
副作用としてまれに注射した部位が腫れたり、発疹や発熱等がみられることがありますが、症状は軽度で済むことが大半であり、大きな副作用はほとんど報告されていません。
シナジス®の効果は1ヶ月程度持続するため、RSウイルス感染症の流行期間である秋から春までの間は、月に1回筋肉注射を継続して行うことがあります。接種の開始時期や回数は、生まれ月や疾患によって違ってくるため、医師に相談しながら決めていきましょう。
RSウイルス感染症は、細気管支炎によって4つの合併症を引き起こす可能性があります。
・急性脳症
無呼吸発作により急性脳症(乳幼児突然死症候群)を合併する可能性があります。命にかかわるような合併症なので注意が必要です。生後1ヶ月未満の乳幼児は、RSウイルスに感染しにくいとされていますが、感染して発見が遅れて無呼吸発作を起こしてしまうと突然死を起こしてしまうリスクが高まります。
・肺炎
小学生以上の子どもや大人の場合は肺炎を起こすリスクがあります。
・喘鳴
喘鳴とは気管が狭くなってしまい、呼吸のたびにゼーゼー、ヒューヒューという音が聴かれる状態です。細気管支炎にかかると、長期間喘鳴を繰り返すといわれています。
・中耳炎
RSウイルス感染症による鼻水・鼻づまりによって中耳炎を併発することがあります。
RSウイルス感染症は、2歳までにほぼ全員の子供が感染するといわれています。多くは軽症で済みますが、重症化すると危険です。特に、1歳未満の乳幼児の場合には、乳幼児突然死症候群につながる可能性があります。子供の様子がおかしいと感じたら早急に病院へ行くようにしましょう。