記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/2/21
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
脳死の患者さんなどから心臓を譲り受け、それを移植する「心臓移植」。非常に有名な治療法として知られていますが、心臓移植を受けるにはどんな条件が必要なのでしょうか。ドナーが見つかるまでの流れや、移植手術の内容などをお伝えしていきます。
心臓移植とは、ドナーから心臓を提供してもらい、自分の心臓の代わりとして機能させる治療法です。延命と社会復帰を目的に実施されます。心臓移植が行われるのは、心臓移植でないと治療が困難な重度の心臓病の場合です。具体的には、重症の突発性心筋症、広範囲に及ぶ心筋梗塞、重度の心筋障害を伴う心臓弁膜症などがあげられます。
心臓移植の行われる前には、内科的な治療や強心剤の点滴、効果が期待できる手術、補助人工心臓を活用した治療等が行われます。それでも、病状が改善しない場合には心臓移植が必要という判断になります。
心臓移植を受けるためには、まず日本臓器移植ネットワーク(JOT)に移植希望者として登録し、ドナーが現れるのを待つことになります。心臓移植に使われる心臓(ドナー心)は、脳死者からの善意によって提供されたものです。ドナー心の保存のタイムリミットは短く、ドナーから心臓を取り出し、患者へ移植するという一連の処理を4時間以内に行う必要があります。
患者は入院もしくは自宅で療養しながら、ドナーが現れるのを待つことになります。規則正しい生活をしながら、他の病気にかからないように注意しましょう。腎臓や肝臓や胃などの心臓以外の病気になってしまうと、心臓移植が受けられなくなります。睡眠や食生活などの健康管理をしっかり行いましょう。定期的な検査を行い、いつドナーが現れてもよいように準備しておくことが肝心です。
ドナーを待つ期間はまちまちですが、移植の話は突然やってきます。ドナーの血液型や体格などに基づき、その心臓に最適だと考えられる人が移植手術の対象として選ばれますが、患者の病状が悪く、移植の緊急性が求められる状態(緊急度1)の場合は、優先的に心臓移植を受けることができます。一方で、ドナー心が他の患者の方が適合度が高いと判断されると、そちらへ回されてしまいます。このため、自分に適したドナーが現れるまでは焦らずに待つ必要があります。
ドナーが現れると日本臓器移植ネットワークから病院へ連絡が入ります。そして、患者やその家族に対して移植手術の意思確認が行われます。手術実施を患者が了承すると、病院へ移動して手術の準備に入ります。
ただし、提供された心臓の状態によっては、移植手術ができない場合もあり、手術に耐えられるドナー心であるかどうかは、移植手術を行う病院での判断になることもあります。移植手術は全身麻酔をして行われ、時間としては5~6時間程度かかります。補助人工心臓を装着していたり、これまでの手術の実施回数など、患者の状態によってはもっと時間がかかる場合もあります。手術中は、人工心肺という機器によって血液循環と呼吸を維持しながら、ドナー心を移植していきます。
心臓移植手術後は、集中治療室に入ります。状態が落ち着けば、2日目以降には胃管が抜かれ、寝たまま脚を上げたり座るなどリハビリがスタートします。
手術後3~5日目には集中治療室から個室に移ります。面会は可能ですが、感染症にかからないように、消毒やマスクが必要です。風邪など感染症にかかっている可能性がある方は病棟内には入れません。また、この頃には食事も徐々に普通食になります。ベッドサイドでトイレに行ったり、歩いたりなどのリハビリを行います。
手術後7~14日目には一般病棟の大部屋に移動します。手術後7日目には、心筋生検という拒絶反応の有無を調べる検査が行われます。心筋生検は、手術後1ヶ月間は週に一回行います。免疫抑制剤の調整によって心機能が安定し、体力が回復したら退院できます。
心臓移植は、重度の病気を治すことができる治療法ですが、自分に合うドナーを待ったり、リスクの高い手術を受けたり等、いろいろな困難が伴います。一方で手術が成功すれば、助からないと思われた人が、社会復帰をし元気な生活を取り戻すことも可能でしょう。