記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/2/22 記事改定日: 2020/3/2
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
便失禁とは、自分の意思とは関係なく便がもれてしまう症状です。この症状は、高齢者だけではなく出産後の人にも起きることをご存知でしょうか。
この記事では、出産後の便失禁について解説していきます。
「便失禁で悩んでいる人がいる」と聞くと、多くの人は高齢者を思い浮かべるかもしれません。でも、便失禁で悩んでいるのは高齢者だけではありません。あるアンケート結果では30代女性の約7%が便失禁で悩んでいるという結果がでました。
このような比較的若い世代の便失禁は、出産時の肛門括約筋や神経損傷、過度のストレスによる過敏性腸症候群などが原因になることが多く
ことがきっかけになると考えられています。
会陰裂傷は状態によって4段階に分けられ、以下のように段階ごとで便失禁の症状の出方が変わってきます。
骨盤底筋とは、膀胱や子宮、直腸などが下がらないように骨盤を支えている筋肉です。骨盤底筋は、妊娠中に胎児や羊水の重みなどを支えているために負担がかかるうえ、出産によってさらにダメージを受けます。そのため、個人差はありますが、出産後はどんな人も骨盤底筋が衰えます。
出産でダメージを受けた骨盤底筋は自然に少しずつ修復され回復していきますが、ケアが不十分だったり、何度も出産を経験したりすると完全に回復できずに便失禁を引き起こすことがあります。
出産によってダメージを受けた骨盤底筋や肛門括約筋は、時間が経つとともに回復していきますし、適切なケアを行うことで回復を早めることができます。骨盤底筋や肛門括約筋の問題からくる便失禁であれば、これらの筋肉が改善することで症状も改善していきます。
ただし、なかには専門の治療が必要な場合もあります。また、便失禁が長く続けばQOLにも大きく影響するでしょう。恥ずかしがらずに、早めに専門医に相談しましょう。
出産は、骨盤底筋など様々な部位にダメージを引き起こします。これらのダメージは、産後の「何かしらのトラブル」の原因であり、便失禁もそのトラブルのひとつです。産後のダメージが改善するにしたがって自然に治っていくこともありますが、次のような治療が必要になることもあります。
肛門括約筋など排便に関わる器官に大きな異常がない場合は第一に生活改善を行います。便失禁は便が柔らかくなるほど起こりやすくなるため、食生活の改善指導などが行われ、骨盤底筋を鍛えるエクササイズを指導されることもあるでしょう。
生活改善を行っても便失禁が改善しない場合は、便をまとめて固形にする作用のある薬の内服治療を行うことがあります。
ただし、これらの薬は便秘を促すこともあるので投与には慎重になる傾向があります。
出産時の肛門括約筋へのダメージが原因で便失禁を起こしやすくなっていると考えられる場合は、ダメージを受けた部位を縫合したりする「肛門括約筋修復術」が行われます。そのほか、肛門括約筋の収縮などに関わる神経に電気刺激をして機能改善を図る「仙骨神経刺激療法」が選択されることもあります。
出産直後は比較的若い世代でも便失禁になることがあります。デリケートな問題で相談しにくいでしょうし、深く悩んでしまうこともあるでしょうが、出産が原因の便失禁の多くは治らないものではありません。早めに専門的な治療やケアを行うことが早期の改善につながりますので、早めに医療機関で相談しましょう。