記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/2/27
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
白質ジストロフィーは、中枢神経が集まっている「白質(はくしつ)」という神経の束が破壊されることで発症する病気の総称です。この記事では、白質ジストロフィーのひとつである異染性白質ジストロフィーについて解説します。
白質ジストロフィーは、中枢神経が集まっている「白質(はくしつ)」という神経の束が破壊されることで、さまざまな症状を引き起こす病気の総称です。白質の破壊は、身体を健康な状態に保つのに必要な酵素を作り出せず、代謝異常が起こったために起こります。この病気は、先天性の染色体異常によって発症すると言われています。
また、白質ジストロフィーは遺伝性があり、代表的な病気として「クラッペ病」「異染性白質ジストロフィー」「副腎白質ジストロフィー」があります。
クラッペ病は、グリコシルセラミダーゼという酵素の欠損によって、細胞に対して毒性を持つサイコシンという物質が脳の白質に蓄積し、白質を破壊するために発症します。この病気は生後6カ月ほどで発症し、白質が傷ついて神経伝達の速度が下がるため、筋肉の緊張、運動障害、意識混濁、視力・聴力の低下といった症状がみられます。
この病気かどうかはMRIで診断できます。
異染性白質ジストロフィーは、アリルサルファターゼという酵素の欠損によって、老廃物スルファチドの分解ができなくなり、脳や腎臓の白質に蓄積して神経細胞が破壊されていきます。この病気は1~4歳までに発症し、歩行障害、こわばり、発音ができない、知能低下などの症状があらわれます。
副腎白質ジストロフィーは、極長鎖脂肪酸(ごくちょうさしぼうさん)という物質の分解にかかわるタンパク質に異常が起こり、極長鎖脂肪酸が体に蓄積したために、脳の白質と副腎に異常があらわれます。発症すると皮膚の色素沈着、行動障害、四肢のこわばりと麻痺、けいれん、視力・聴力低下といった症状がみられます。この病気には様々なサブタイプがあり、男児に発症することが多いですが女児でも発症することがあり、また症状も極めて多様です。
異染性白質ジストロフィーは「MLD」とも呼ばれる病気で、細胞内で生まれた老廃物を処理する役割を担う細胞内小器官リソソームに異常が起こって発症します。
通常、リソソームは老廃物(スルファチド)の分解に必要な酵素(アリルスルファターゼA)を作り出す機能を持っています。しかし、異染性白質ジストロフィーの人は、生まれつきアリルスルファターゼAを作る遺伝子が欠けているため、酵素を作り出すことができません。その結果、本来分解されるはずのスルファチドが分解されず、腎臓、脾臓、脳などに溜まり、やがて神経が集まっている脳の白質を徐々に壊し始めます。
速やかな神経伝達が妨害され、中枢神経が石灰化した結果、短期間で歩行や発音などの運動機能や視力、聴力、知能が奪われていく病です。
以下に、異染性白質ジストロフィーの発症が疑われる症状を2つご紹介します。
歩き方がなかなか上達しない、1歳半を過ぎても数歩ぐらいしか歩けない、歩くことを嫌がる様子が見られるときは注意が必要です。こうした症状は、異染性白質ジストロフィーの発症による歩行障害の可能性があります。
子供の目に斜視(目の位置が左右どちらかに偏っている症状)や眼振(がんしん:眼球が左右に小刻みに揺れる症状)、手の小刻みな震えが見られる場合も、異染性白質ジストロフィーを発症している可能性があります。
上記のような症状が見られたら、できるだけ早く小児科を受診し、MRIなどで脳や神経に関する検査を受けることをおすすめします。
異染性白質ジストロフィーは、短期間で中枢神経を破壊し、日常生活に必要な運動機能や知能を奪っていくこともある病気です。しかし、病気のサインを知っておけば、早めに医療機関を受診して治療することができます。疑いを感じたら、すぐに病院に行ってください。