記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/3/19 記事改定日: 2019/5/20
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
慢性腎不全などの持病がある方は、「二次性副甲状腺機能亢進症」という病気の発症リスクが高まります。この病気の特徴や具体的なリスク、症状などについて解説します。
副甲状腺は、血中カルシウム濃度を正常な値へと高める副甲状腺ホルモンを分泌する器官です。
副甲状腺ホルモンが過剰に分泌される症状が、副甲状腺そのものの異常ではなく、それ以外の器官や組織の異常が原因で起きることがあります。これを二次性副甲状腺機能亢進症と呼びます。
二次性副甲状腺機能亢進症の主な原因としては、ビタミンD欠乏症や慢性腎不全が挙げられます。
二次性副甲状腺機能亢進症を発症すると、副甲状腺ホルモンが分泌されすぎることで、血液中のカルシウム分が過剰となります。そうなると血管や心臓などの循環器系に余分なカルシウムが沈着しやすくなり、動脈硬化や心臓弁膜症などの原因にもなりえます。
二次性副甲状腺機能亢進症によって生成される血液中の過剰なカルシウムは、患者自身の骨の成分から供給されます。そのため、骨が全体的に脆くなる「線維性骨炎」を発症することがあります。
特に慢性腎不全などの腎機能障害がある患者さんの場合、「骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)」の影響によってリンが排泄されづらくなり、体内に溜まっていきます。このリンも、副甲状腺ホルモンの分泌を余計に促進させ、二次性副甲状腺機能亢進症のさらなる悪化に繋がる恐れがあるのです。
腎機能障害の影響で二次性副甲状腺機能亢進症が進んでいくと、血液中にカルシウム分やリン分が過剰に含まれるようになります。すると、カルシウムとリンが化合して、骨や歯の主成分であるリン酸カルシウム〔Ca3(PO4)2〕が血中に増えていきます。
このリン酸カルシウムが、血流を通じて血管や筋肉、関節、皮膚、心臓などに溜まっていくのが「異所性石灰化」という症状です。皮膚のかゆみ、関節や筋肉の痛み、ひいては心筋梗塞や脳梗塞の引き金にもなりえます。
二次性副甲状腺機能亢進症の根本的な治療では、発症の原因となる病気を特定して治療を行っていくことが大切です。
また、それと並行して不足したビタミンD、増加したリンを補正するための治療が行われます。具体的には不足するビタミンD製剤の内服、リン吸着剤の内服治療が行われます。また、食事にも注意し、リンの摂取制限やビタミンD摂取を行っていく必要があります。
これらの治療を行っても病状がコントロールできない場合には、副甲状腺を切除する手術が検討されます。
二次性副甲状腺機能亢進症を発症すると様々な身体症状が出て、心筋梗塞など命に関わる状態につながることがあります。
投薬や手術によって治療可能なので、皮膚のかゆみや関節痛などの異変があれば早めに病院を受診してください。