記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/3/8
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
肛門付近や外陰部周辺に赤い斑点や腫瘍があり、塗り薬を塗ってもなかなか消えない場合、「乳房外パジェット病」の可能性があります。乳房外パジェット病は皮膚癌の一種であり、高齢者の方や男性は発症率が高いので、ぜひご一読ください。
乳房外パジェット病とは、外陰部や肛門の周り、わきの下などの皮膚に発症する癌の一種です。パジェット細胞という癌細胞が、皮膚に広がり、さまざまな症状を引き起こします。具体的な症状としては、外陰部や肛門の周りに赤い斑点ができたり、ただれ、じくじくした体液が出てきたりします。
湿疹と勘違いしてしまうケースも少なくありませんが、塗り薬を塗っても改善しません。進行すると皮膚の症状が広がり、さらには癌細胞がリンパ節へ転移することもあります。
乳房外パジェット病は、60歳以上の高齢者に発症しやすく、特に男性は女性の2~3倍の発生頻度となっています。乳房外パジェット病は、早期発見・早期治療が遅れてしまう場合があります。それは、初期には自覚症状が軽いこと、発症する部位が比較的気づきにくい部位であることという患者側の側面と、病状が湿疹やたむしと似ているために誤診しやすいという病院側の側面があります。
なお、乳房外パジェット病は他の臓器の癌との合併率が高いため、乳房外パジェット病を発症した場合には、転移に対する注意が必要です。
乳房外パジェット病の治療は、原則として手術による切除になります。手術では、癌をすべて取り除くために、癌の広がっている範囲から1~3cm外側の正常な組織も含めて切除します。
ただし、乳房外パジェット病は腫瘍の境界が分かりにくく、正常にみえる周囲の組織にもパジェット細胞が存在している場合があります。そこで、切除の範囲をきちんと見極めるためにマッピングバイオプシーという方法が行われます。
マッピングバイオプシーとは、周囲の組織をメスで切り取り、癌細胞の有無を検査する方法です。マッピングバイオプシーによって、健康な部分と病変部分の境界を確認した上で、確実に癌を取り除きます。また、取り除く範囲が大きくなる場合が多いので、皮膚などを移植して、手術部位の再建も行います。
なお、癌がリンパ節にまで転移している場合には、リンパ節郭清(かくせい)を行います。リンパ節郭清とは、癌の周辺にあるリンパ節を切除することです。癌細胞はリンパ節を通って全身に広がっていきます。そこで癌が転移している可能性があるリンパ節を取り除くことで、再発を防ぐのが、リンパ節郭清です。
乳房外パジェット病は高齢者に発症する場合が多いので、体の健康状態や合併症のリスクなどから手術ができない場合もあります。その場合には、放射線療法などの保存的療法を行います。
乳房外パジェット病は、転移して他の臓器の癌を引き起こすリスクがありますが、初期症状が軽く湿疹やたむしと似ているために、勘違いして放置してしまうケースも少なくありません。早期に発見できればそれだけ治る確率が上がりますので、外陰部や肛門の周囲に赤い斑点ができたら、早めに病院を受診しましょう。