記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/3/8
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
食中毒には、ウイルスや細菌が原因で起こるもの以外に、フグやキノコなどの自然毒や、農薬などの化学物質が原因で起こるものもあります。こういった食中毒の特徴や予防法について、以降で解説します。
食中毒とは、細菌やウイルス、人体に有害な物質を含んだ食品を摂取することで、下痢や腹痛・嘔吐などの胃腸障害をはじめ、知覚障害や呼吸障害を引き起こす状態です。
食中毒には、「細菌性感染型食中毒」「細菌性毒素型食中毒」「ウイルス性食中毒」「自然毒食中毒」「化学性食中毒」などさまざまな種類があります。
まず、腸炎ビブリオやサルモネラ菌などの細菌性感染型は、体内で増殖した細菌が毒性を獲得することで発症します。
次に、ボツリヌス菌が有名な細菌性毒素型は、細菌が産出した毒素を摂取することで起きる食中毒です。
ノロウイルスなどウイルス性の食中毒は、ウイルスが付着した食品の摂取や、感染した人の手に接触することで発症します。
自然毒食中毒とは、食物連鎖を通して動物の体内に取り込まれた有毒成分を摂取することで発症する食中毒です。
最後に化学性食中毒とは、食品を製造する過程で有害な化学物質が混入してしまい、それを食べたことで発症する食中毒です。
細菌やウイルスによる食中毒を経験される方は比較的多いですが、自然毒や化学性物質を原因とする食中毒も想定以上に罹患するリスクのあるものです。
まず、自然毒は多くの場合、自然界に散在する微細な毒素を分泌する動植物をエサとして体内に取り入れた動物などを、食物連鎖上の上位にある種類の動物が捕食する過程の中で、次第に毒素の濃度が高まり、フグ毒のように致死的毒性を獲得すると考えられています。
これに対し化学性食中毒では、食品の製造工程で本来混入すべきでない化学薬品が混入したり、添加量を誤ったために、人体に有害な化学物質が生成されることが原因で生じます。化学薬品の毒性は千差万別なので、症状もさまざまです。
自然毒食中毒の死亡者のうち、半数はフグ毒によるものとされています。フグ毒は主に全身の筋肉に作用し、食後20分〜2時間程度経過すると唇や舌の先端に痺れが出てきます。その後、嘔吐に続いて手足のしびれや言語障害、ひいては呼吸障害を引き起こし、死亡することもあります。
自然毒では、毒キノコや毒草による食中毒もあります。食後30分〜3時間ほど経つと、嘔吐や下痢が起こります。なお、キノコには肝機能障害や腎機能障害をも引き起こす猛毒を持つ種類も存在するので、一層注意が必要です。
一方の化学性食中毒ですが、金属製毒素の食中毒では、口に入ってから30分〜1時間後に吐き気・嘔吐・下痢などの症状が表れます。農薬や洗剤による食中毒などは、まずにおいやクセが強烈なので、瞬時に口内の刺激症状を感じ、口内が焼けるような感覚に襲われて、痛みや嘔吐が引き起こされます。
自然毒や化学性薬品が原因の食中毒は、一度発症すると深刻な事態になりかねない危険性を秘めています。そのため日常生活を送る中でも、予防法を実践することが大切です。
先述のフグ毒の死亡例の多くは、調理師免許のない一般家庭でさばいた食材を使用したことが原因になっています。フグ調理師の免許を持っていない人が加工したフグ肉は、絶対に口に入れないように注意しましょう。
また、収穫期の秋になると遭遇するリスクが高まる毒キノコや毒草ですが、一見して毒の有無は判断できません。特に毒キノコはわずかな分量でも猛毒を有する種類もあるので、素人判断で食べることは絶対にやめましょう。
そして金属毒に対しては、調理器具はサビや大きな傷が付いていないのか確認し、長時間料理を保管するのを控えることが大切です。
自然毒食中毒と化学性食中毒は、発症の原因がある程度はっきりしている分、予防もしやすいといえます。収穫したキノコを自己判断で食べない、調理師免許を持たない人のさばいたフグは食べない、といった予防線をしっかり張ることが大切です。