記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/3/13
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
会社でプレゼンをするとき、手の震えや汗が止まらなくなってしまう——もしかするとそれは、「社交不安障害(SAD)」のサインかもしれません。今回の記事では、いま患者数が増加傾向にある社交不安障害について、詳しく解説していきます。
社交不安障害(SAD)とは、人前に出て発言や行動をする際に強い不安や恐怖を感じ、これが原因でさまざまな症状が出てしまう心の病気です。人前で失敗を犯すことが恥ずかしいという思いから、大勢の人前でのプレゼンやスピーチ、コミュニケーションに恐怖を感じるようになり、発症すると考えられています。
代表的な症状としては、人前で字を書こうとすると手が震える、人前に出ると顔が真っ赤になって話せない、汗が止まらない、大勢の人のいる場に行くのが怖くなる、などがあります。人によっては動悸や腹痛などの症状が出る場合もありますが、対人関係や公の場においてこれらの症状が出るようであれば、社交不安障害が疑われます。
社交不安障害は、かつては小児の頃から「人前に出るのが苦手」という気質を持っていた人が、思春期に入って発症する病気とされていました。しかし近年、小児~思春期にかけて発症の傾向が感じられなかったにも関わらず、30~40代になってから突然、社交不安障害を発症する新しいパターンが出てきたのです。
この新パターンの社交不安障害は、大人になってから会社でプレゼンをするときなどに突然発症するケースが多く、一旦その場を離れると症状が改善します。このため、30~40代で社交不安障害を発症する患者さんは、何らかの失敗体験をきっかけに潜在的にあった対人恐怖が大きくなり、苦痛となったことで、これを回避しようとして社交不安障害を発症するのではないかと考えられています。
社交不安障害の代表的な治療法には、薬物療法と認知行動療法の2つがあります。
薬物療法では、うつ病治療に使用されるようなSNRI、SSRIなどと呼ばれる抗うつ薬、抗不安薬を医師に処方してもらい、服用することで症状の改善を目指します。ただし、薬によっては効果を実感するのに数週間~数か月かかったり、また10%程度の人に吐き気などの副作用が出る可能性があります。
一方、認知行動療法は、患者本人が辛いと感じる状況に対して持っている感覚や考え方を変えることで気持ちを楽にし、症状をおさえるための治療法です。辛いと感じる事象に立ち向かおうという本人の意思がないとすすめられない治療ですが、少しずつ感覚や考え方を変えることで、症状の改善が見込めます。
上記2つの治療法は、それぞれ単独で行う場合もあれば、並行して行う場合もあります。医院によって治療方針は異なりますので、医師によく相談してください。
小児から30~40代の大人まで、誰にでも発症する可能性のある社交不安障害(SAD)は、依存症やうつ病など、他の精神疾患の発症と関係があるとも言われています。辛い症状が続く場合は、年齢にかかわらず早めに病院を受診して適切な治療を受け、症状の進行を防ぎましょう。