記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/3/19
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
夜に睡眠をとっているにもかかわらず、日中の強い眠気に見舞われる「過眠症」。今回は、この過眠症などの睡眠障害が仕事と生活にどんな影響を与える恐れがあるのか、具体的にご紹介します。
過眠症とは、夜ちゃんと睡眠をとっているのに、日中に起きていられないような強烈な眠気に襲われる疾患です。昼食後の時間帯には、健康な人でも眠気を感じる場合が多いですが、過眠症の場合は、病的な強い眠気によっていくらがんばっても居眠りしてしまったりします。
このような病的な眠気によって、社会生活に支障が生じる場合もあります。仕事や勉強の能率が落ちたり、居眠りをしてしまうことで、ネガティブな評価につながったりします。また、車の運転中に眠気に襲われて交通事故を起こしてしまったり、仕事の判断ミスにより大きな事故につながったりもします。
過眠症などの睡眠障害は、個人の健康はもちろんのこと、社会的にも大きな影響を及ぼします。
まず、睡眠障害は休養不足につながり、精神と身体に悪影響をもたらします。特に睡眠障害の人は精神疾患を併発する場合が多く、睡眠障害が起きるとうつ病につながる場合があるので、睡眠障害が出現したらうつ病の発症や再発に注意する必要があります。また、睡眠障害は高血圧や糖尿病、胸やけなどの生活習慣病を悪化させるなど、身体にも悪影響を及ぼす可能性があります。
睡眠障害は社会にも悪影響を及ぼします。睡眠障害によって、日中の作業能率や注意力が低下することで、人為的なミスにつながります。アラスカにおけるタンカー事故、スペースシャトル・チャレンジャー号の墜落、スリーマイル島での原発事故などは、睡眠障害が原因となった産業事故とされています。また、このような大規模な事故だけでなく、長距離ドライバーやタクシー運転手、新幹線運転士の居眠り運転など、私たちの日常に密着した産業においても、睡眠障害によって事故が発生しています。
過眠症の治療は、薬による対症療法を行います。対症療法とは、病気の原因を取り除くのではなく、病気によって起きている症状を緩和したり、なくしたりする治療法です。
過眠症においては、大きく3種類の薬が使われます。
一つ目が、モダフィニルです。過眠症の治療においては、一番選択される薬です。1日1回、朝食後に2錠服用します。効果が十分でない場合には、昼食後に1錠追加することもあります。副作用としては、頭痛や吐き気があります。飲むタイミングが遅くなってしまうと、夜に寝るのが難しくなることがあるので注意が必要です。
二つ目が、メチルフェニデート塩酸塩です。昔から使用されていた精神刺激薬で、眠気の強さに応じて10~60mgの範囲で調整します。強い覚醒作用がありますが、依存性が高いので注意が必要です。神経過敏や焦燥感、動悸、発汗、不整脈が現れることが報告されています。扱うには登録が必要で、適正な使用が厳守されています。
三つ目が、ペモリンです。1日あたり20~200mgを朝食と昼食後に分けて服用します。副作用として、肝障害が現れることがあり、定期的な血液検査が必要となります。副作用の問題があるので、少量からスタートし、なるべく少ない服用量で症状がコントロールできるようにします。
なお、これらの薬には副作用や依存性があるので、眠気を完全になくす量を摂取するのではなく、7割程度の症状改善くらいの量で調整した方がよいです。
過眠症になってしまうと、日中の眠気が我慢できないために生活にさまざまな影響を及ぼします。過眠症はうつ病などの精神疾患や、生活習慣病などの身体疾患につながり、さらには産業事故などの社会的な悪影響ももたらします。治療は、薬による対症療法が行われますが、薬の不作用や依存症の懸念もありますので、医師の指示に従って正しく服用するようにしましょう。