記事監修医師
日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科
川俣 綾 先生
2018/3/5
記事監修医師
日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科
川俣 綾 先生
息の臭いの原因として、「膿栓」があります。では、この膿栓とはいったいどんなものでしょうか?治療法と併せて解説していきます。
口臭は、生理的口臭と病的口臭に分けられます。
生理的口臭とは、日常生活の中で、自然に発生する口臭のことです。例えば、寝起きは口臭が発生しやすいです。口の中が乾燥することで、細菌が増えて口臭の原因となるガスが発生するからです。また、空腹時にも口臭が発生します。空腹になると唾液が少なくなり、口の中の細菌が増加することで口臭につながります。さらに、消化活動が行われないことで、胃の消化液が使われずに分解されガスが発生します。そのガスが血液に取り込まれて息として吐き出されることで口臭につながります。緊張時にも口臭が強くなります。口の中が乾き、細菌が増えてしまうからです。
一方、病的口臭とは、病気が原因で口臭が起きることです。例えば、虫歯や歯周病が原因になって口臭が起きることがあります。歯周病になると歯茎が炎症を起こしますが、それが原因で口臭が強くなることがあります。また、胃腸の病気や、気管支や肺の疾患、糖尿病、肝臓病も口臭が強くなる原因になります。
口臭の原因はさまざまですが、その中で「膿栓」と呼ばれるものが原因となる場合があります。
まず、口の奥の両脇に「扁桃」と呼ばれる部位があります。扁桃には、体内に侵入しようとするウイルスや細菌を捕える役割があります。扁桃で捕えられたウイルスや細菌の死骸が溜まってできたのが膿栓です。膿栓は、白いつぶつぶで米粒程度の大きさですが、硫黄を強烈にしたような臭いがします。膿栓は通常、飲み込んだり、咳や痰によって排出されてしまいます。ところが、口が乾燥し、唾液が少なくなっていると口の中に溜まりやすくなり、口臭の原因となります。
膿栓以外にも、ホルモンの変化が口臭の原因となる場合があります。特に女性は、妊娠や生理(医学的には月経というのが一般的です)の時に、ホルモンが変化することで、口臭が強くなることがあります。排卵予定日前の48時間は女性ホルモンの分泌量はピークになりますが、それに伴い、口臭の原因となるガスが急増します。また、妊娠時には女性ホルモンの分泌量が増加しますが、女性ホルモンには歯周病菌の増殖を促す作用があり、歯周病が悪化することがあります。さらに、妊娠時には唾液の分泌量も少なくなり、つわりの影響で歯磨きが十分にできなかったりすることで、口の中の環境が悪くなる場合があります。これらの原因が重なることで、口臭につながることがあります。
膿栓は自分で除去しようとすると、扁桃を傷つけてしまう可能性があります。除去したい場合には、耳鼻咽喉科を受診して、除去してもらうようにしましょう。膿栓の除去は、専用の洗浄器を使って行います。扁桃腺に機器の管を突っ込み、水圧で洗い流します。それでも除去しきれない場合には、専用の機器を使い、膿栓を吸引することで除去します。
口臭の原因は、寝起きや空腹時の口の中の乾燥、歯周病などさまざまです。もし口臭の原因が膿栓だとわかったときには、除去は自分では行わず、耳鼻咽喉科を受診して治療してもらうようにしましょう。