記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/5/10 記事改定日: 2020/2/3
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
「RS3PE症候群」という病気をご存知でしょうか?高齢者の方に好発する疾患で、手がボクシンググローブのように腫れるという特徴があります。その他の特徴的な症状や治療法について、以降で解説していきます。
RS3PE症候群とは、60歳以上の方に好発する、リウマチ反応陰性の多発関節炎の一種で、「RS3PE」はこの病気の特徴を表す頭文字をそれぞれとったものです。
「Remitting Seronegative Symmetrical Synovitis with Pitting Edema」を訳すと、予後良好で自然に良くなっていくようにみえる、血清反応陰性で圧痕性浮腫がある対称性の滑膜炎になります。
RS3PE症候群の代表的な症状は、次の通りです。
上記いがいには、倦怠感や体重の減少、微熱などの変化が出ることがあります。
RS3PE症候群は、悪性腫瘍の初期症状という見方もされており、悪性腫瘍の合併率は31〜54%と高いです。男性の場合は通常の高齢者のおよそ7倍、女性は若年女性のおよそ4倍の発症率といわれています。
合併する悪性腫瘍の種類としては、特に胃がん、大腸がん、前立腺がん、悪性リンパ腫が多い傾向がありますが、肺がんや卵巣がん、膀胱がん、慢性リンパ性白血病を合併したとの報告もあります。こういった腫瘍随伴RS3PE症候群の場合は、ステロイドに対する反応が悪いことが特徴です。
また、RS3PE症候群はシェーグレン症候群や結節性多発動脈炎などの他の膠原病やサルコイドーシスなどとの合併例も報告されています。
これらとの鑑別や診断が難しい病気なので、できるだけ早くに「膠原病の専門医」を受診することが非常に重要になります。
RS3PE症候群は関節の痛みや腫れなどの症状が目立ちますが、上でも述べたように悪性腫瘍を合併しやすいのが大きな問題となります。次のような身体の変化があるときはできるだけ早く病院を受診するようにしましょう。
RS3PE症候群の治療では、低用量のステロイド薬を使います。
RS3PE症候群の「R」が「予後良好」を示すように、プレドニゾロン®などの副腎皮質ステロイドの投与によって2週間程度で正常化することが多いです。
しかし、薬をすぐに中止すると再発することがあるので、減薬の判断は慎重に行われるでしょう。また、減薬の途中で症状が再燃したり、ステロイド薬で効果が得られない場合は、免疫抑制薬を併用することもあります。
RS3PE症候群はステロイド薬の投与によって改善するケースが多い病気ですが、悪性腫瘍を合併する場合もあります。早期に発見して適切な治療を始めることが重要なので、気になる症状がみられた場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。