記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/3/22
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
運動サポート用のサプリメントとして服用する方も多い「L-カルニチン」。このL-カルニチンが不足すると、あるいは摂取しすぎると、どんな問題が生じる恐れがあるのでしょうか?
L-カルニチンは、人体の筋肉をつくる組織に多く含まれており、脂質から体を動かすエネルギーを生み出すのに必要な物質です。特に心臓を動かす心筋に多く含まれるL-カルニチンは、生命維持にも必須だといえます。
細胞の中にあるミトコンドリアは脂質をエネルギーに変換する役割を果たしますが、脂質(脂肪酸)はL-カルニチンと結びついて初めてミトコンドリアの内部へ取り込まれます。瞬発的エネルギーを生み出す糖質に対して、脂質は持久的に続くエネルギーを生み出し、人体の様々な筋肉を動かし続ける源となります。
L-カルニチンは、肝臓や腎臓など体内で生成されるものもありますが、その3倍以上は肉や牛乳などの食物から摂り入れられたものです。筋肉に含まれるL-カルニチンの量は、高齢になるほど減っていく傾向があります。
L-カルニチンの一日の推奨摂取量は、明確に定められていません。しかし、L-カルニチンは食物由来の栄養素であり、過剰に摂取したとしても特に問題となることはありません。
具体的には、体重1kgあたり20mgの摂取を毎日続けていても健康に害はないとされています。
ただ、非常にまれにではありますが、過剰摂取によって次のような症状が引き起こされることがあります。
また、特定の疾患を持っているとL-カルニチンの過剰摂取による影響が広がりやすくなります。たとえば、発作を起こす持病がある人にとっては、過剰なL-カルニチンの影響で発作が起きたり、尿毒症患者の場合は筋力低下を引き起こしたりすることがあります。
人体のL-カルニチンが不足すると、全身の筋肉が機能低下することにより、「L-カルニチン欠乏症」を発症するリスクが高まります。
新生児期から乳幼児期にかけてはエネルギー源として脂質を多く使うことから、L-カルニチン欠乏症になりやすい傾向があります。また長時間の運動後や、女性の妊娠中、寒冷時なども脂質からのエネルギー生成が盛んになるので、L-カルニチンの欠乏に注意が必要です。
L-カルニチン欠乏症の代表的な症状は、以下の通りです。
L-カルニチン欠乏症は、軽症であれば市販のサプリメントなどでも回復することがありますが、重度の場合は病院での治療が必要となります。
L-カルニチン欠乏症の治療は、基本的にはL-カルニチン製剤の投与が行われます。経口摂取が可能な場合は、経口投与が行われますが嚥下困難があるような場合には静脈注射による投与が選択されます。
多くは投与を続けることで症状は改善していきますが、脂肪酸の代謝異常が背景にある場合には低脂肪の食事制限などが必要になることも少なくありません。また、極端に脂質の摂取が減少している場合にはトリグリセリドや必須脂肪酸などを含んだサプリメントが併用されることがあります。
L-カルニチンはダイエットサプリの主成分として人気を集めています。しかしL-カルニチンを摂り過ぎると、嘔吐やけいれんなどの副作用が起きる危険性があります。くれぐれも過剰摂取には注意しましょう。