記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/4/16 記事改定日: 2019/5/17
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
めまいや立ちくらみなどに見舞われる貧血。特に女性に多い症状ですが、この貧血を予防する効果があると言われているのが、「モリブデン」というミネラルです。具体的な働きについて、以降で解説します。
モリブデンは航空機やロケットのエンジン、ステンレスの包丁などにも利用されるなど、産業上でも重要な金属です。そして、人間の身体にとっては、代謝に関わる必須ミネラルのひとつです。人間の体内には数mgという微量しか存在しておらず、肝臓や腎臓、副腎などに存在しています。
モリブデンは、様々な代謝過程で酵素の働きを助けていますが、特に代謝の過程で生じた様々な物質を尿酸に変化させる過程で大切な役割を果たしています。尿酸は、その後尿素に変化され尿として体外に排出されます。
モリブデンは、特にキサンチンオキシダーゼ、アルデヒドオキシダーゼ、亜硫酸オキシダーゼの3つの酵素の働きに不可欠なものです。
キサンチンオキシダーゼはプリン体という物質の代謝を行っています。プリン体は人間の身体を維持するために必要な物質ですが、体内に過剰に蓄積すると痛風を起こします。
また、アルデヒドオキシダーゼや亜硫酸オキシダーゼは、タンパク質を分解して生じるアミノ酸をさらに分解するときに働いています。
この他にも、モリブデンは糖質や脂質の代謝にも関わっています。
モリブデンは、血液をつくる鉄の代謝にも関係しています。身体の中の鉄は、大部分が筋肉や血液中に存在していますが、それ以外にも肝臓を始めとして、骨髄、脾臓などに貯蓄されています。
しかし、何らかの理由で鉄が不足すると、最初に肝臓に貯蓄している鉄を利用するようになります。このとき、肝臓からの鉄の運搬を助けるのがモリブデンです。
このような役割から、モリブデンは鉄欠乏性貧血の予防に効果が期待できると考えられています。
モリブデンは通常の食生活を送っていれば、まず不足することはありません。
しかし長期間にわたる中心静脈栄養や極端なダイエット、偏食などによっては摂取量が不足することもあります。
このようなケースではレバーや卵黄、乳製品、鶏肉などモリブデンが多く含む食材を適度に摂取するようにしましょう。
モリブデンを含む食材はレバーや乳製品、豆類、穀物類に含まれています。きなこの他、納豆や牛乳、ピーナッツなど、食事や間食に取り入れやすいものにも含まれています。
しかしモリブデンは銅の排泄に関わっているため、モリブデンを過剰摂取して銅の排泄が過剰に行われれば、体内の銅が不足してしまいます。サプリメントなどでモリブデンを摂取する際は、過剰摂取にならないように注意が必要です。
銅も貧血予防に関連しており、銅が不足すると鉄の利用効率は下がってしまいます。
モリブデンを多く摂るときは、銅とのバランスも考えながら摂っていきましょう。
モリブデンは体内に極わずかしか存在しないミネラルですが、人間の身体から老廃物を排出する経路に関わったり、貧血を予防したりするなど、重要な働きをしています。
バランス良く食事を摂っていれば、通常は不足も過剰にもなりませんが、偏食が著しい、加工食品の食事が多いといった人は少し意識して摂ってみることをおすすめします。