記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/5/8
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
女性に多い疾患の一つ「膀胱炎」は、再発のしやすさでも知られています。この膀胱炎の再発を予防するためには、どんなことに気をつけたらいいのでしょうか?膀胱炎に効く漢方薬の情報も併せてご紹介していきます。
膀胱炎は、腎臓でつくられた尿をためておく膀胱に炎症が起きることを言います。大きく分けて「急性膀胱炎」と「慢性膀胱炎」の2種類があり、原因や症状が少し違うところがあります。
急性膀胱炎は、細菌に感染して急に症状が起きるもので、原因となる菌の約8割は大腸菌と言われています。女性の体は、尿道口と腟や肛門が近い位置にある構造をしているため、肛門・腟周囲にいる大腸菌が膀胱まで入りやすいのです。通常であれば、菌が入ってきても尿で流されてしまうのですが、疲労や睡眠不足、ストレスなどで免疫力が落ちていると発症しやすくなるとされています。
一方、慢性膀胱炎は急に症状が出るのではなく、炎症が慢性的に続いている状態を言います。細菌が原因で発症した急性膀胱炎が慢性化して起こるほか、膀胱結石などの病気が原因で起こることもあります。
膀胱炎の発症を防ぐためには、普段から陰部を清潔に保つことと、体調を整えること、菌を増やさないようにすることが大切です。普段の生活習慣の中で、以下のポイントに気をつけるようにしましょう。
・生理用ナプキンやおりものシートはこまめに交換する
・排便のあとは、前から後ろに拭くようにする
・トイレを我慢しない
・水をしっかりと飲む
・性行為の前後は陰部や手指を清潔にする
・睡眠不足や過労を避けるようにする
もしも膀胱炎が疑われる症状が出たら、早めに病院を受診することが大切です。また病院で処方された薬は、決められた期間きちんと飲むようにしましょう。症状がなくなったからといって途中でやめてしまうと、菌が膀胱内に残ってしまい、再発してしまうかもしれません。
膀胱炎の治療は抗生物質を使うことが多いですが、漢方薬が使われることもあります。漢方で治療を行う場合、膀胱炎の原因は以下のように分類されます。
膀胱に湿熱(しねつ=老廃物)がたまって、頻尿や排尿時痛、尿の濁りといった症状が起きることです。治療では、瀉火利湿顆粒(しゃかりしつかりゅう)、五淋散(ごりんさん)、猪苓湯(ちょれいとう)、五行草(ごぎょうそう)といった湿邪(湿気による体調不良)や余分な水を取り除くもの、胃腸の働きをサポートするものが使われます。
加齢や慢性的な病気、冷え、過労、出産といった理由で腎気(生命力)が消耗し、膀胱の機能が低下して炎症を起こしやすくなる状態です。漢方の治療では、八味地黄丸(はちみじおうがん)や牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)といった腎気を高めたり体を温めたりするもの、健脾散(けんびさん)やシベリア霊芝(れいし)などの胃腸の調子を整えて免疫力を高める効果があるものが使われます。
ウイルスや菌から体を守る衛気(えき)が不足し、感染しやすくなるというものです。漢方で治療を行う場合は、衛益顆粒(えいえきかりゅう)などの衛気を高める効果があるとされるものが使われます。
膀胱炎のような症状であっても、ほかの病気が原因となっている場合もあります。主に疑われるのは、以下のような症状です。
・膀胱に起きるほかの病気:結石、間質性膀胱炎、腫瘍、排尿障害など
・婦人科系の病気:便秘や大腸の病気など
・消化器系の病気:腟炎、子宮筋腫、卵巣腫瘍など
そのほか、冷え性などで骨盤内に微少な循環障害が起きることで(漢方医学で瘀血と言われる状態)、膀胱炎に似た症状が現れるとも言われています。
膀胱炎は繰り返しやすい病気ではありますが、日常生活の中で気をつければ予防することが可能です。再発や慢性化を防ぐためにも、体調管理などに気をつけるようにしてください。もしも発症した場合は、医師の指示に従い、しっかりと治すようにしましょう。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。