記事監修医師
東大医学部卒、セレオ八王子メディカルクリニック
二宮 英樹 先生
2018/3/15
記事監修医師
東大医学部卒、セレオ八王子メディカルクリニック
二宮 英樹 先生
一般的に、血液中の尿酸値が7mg/dLを超えると痛風を発症するリスクが高まるとされていますが、尿酸値が7mg/dL以下なのに痛風発作が起こることもあります。
尿酸値が低いのに痛風発作があらわれるのは何故でしょうか。
この記事で原因と対処法をお伝えします。
尿酸は遺伝子を構成するDNAやエネルギーを担当するATPなど、人体の情報やエネルギー生産に関わる物質が分解されてできた老廃物で、通常は尿と一緒になって体外に出されますが、発生する量が多かったり排出される量が少なかったりすると、血液中にたまってしまう特徴があります。
この尿酸が体の中に一定以上たまると、それが「尿酸結晶」と呼ばれる結晶になり、親指の付け根に激しい炎症を起こす痛風を引き起こすのです。
痛風が起きる前には「高尿酸血症」という、血液の尿酸値が高い状態が長く続きます。
高尿酸血症を放置して痛風を発症すると、以下のような症状がみられます。
◆足の親ゆびの付け根などの関節に激痛があらわれる(痛みは7日~10日ほど続くことが多い)
◆関節が赤く腫れる
痛風発作を繰り返していると足首や膝の関節まで腫れはじめ、発作が起こる間隔が次第に短くなってきます。
そうすると関節の周囲などに結節ができたり、腎臓が悪くなったり、尿路結石ができたりして、他の病気を招く危険性があります。また、最終的には慢性痛風になる可能性も高いので、放置せずに早めに病院で治療を受けるようにしてください。
尿酸値が低いのに痛風発作が起こる明確な原因はわかっていませんが、「激しい運動」と「体内に尿酸結晶が残っていること」の2点が要因ではないかと考えられています。
激しい運動や無理な動きをしたことがきっかけで関節に付着していた結晶が剥がれ落ちると、剥がれ落ちた結晶を白血球が異物と認識して排除するために炎症を起こしま(この炎症が痛風発作です)。
現在の尿酸値が7mg/dLを下回っていても、それまで高尿酸血症だったような場合には、すでに体内に尿酸結晶ができている可能性が高いです。そうすると何かのきっかけで体内の尿酸結晶が剥がれることで痛風発作が起こります。
関節内の尿酸塩結晶が消えるまでには、血液中の尿酸値を5~6mg/dLにコントロールしても、半年ほどはかかるといわれているので、その間は痛風発作が起こる可能性があることを覚えておきましょう。
血液中の尿酸値を下げる薬剤を「尿酸降下薬」といいます。
尿酸降下薬には尿酸産生抑制薬と尿酸排泄促進薬があり、どちらも痛風発作の痛みを抑える作用や腫れを取る作用はないため、痛風そのものを治療することはできません。
◆代表的な尿酸産生抑制薬・・・アロプリノール、フェブキソスタット
◆代表的な尿酸排泄促進薬・・・ベンズブロマロン、プロベネシド
尿酸降下薬の使用目的は、毎日服用することで体内に蓄積した尿酸を減らし、痛風発作の予防及び腎障害の予防・改善を行うことです。
種類に関わらず薬は医師の指示に従って服用し、自己判断で中断しないようにしてください。
高尿酸血症の程度や医師の判断によって異なりますが、尿酸値が7.0mg/dLを超えた場合は、薬物療法よりも先に食事や運動など生活習慣の改善に取り掛かることが多いです。
特に以下のような点に注意して、尿酸値を7.0mg/dL以下にコントロールしていきましょう。
痛風患者さんの中で肥満がある人ほど、また肥満度が大きいほど尿酸値が高くなる傾向があります。
1日の摂取カロリーを制限する、偏食を避ける、多品目を少量づつ食べる、ゆっくり噛んで食べるなどのことに気をつけ、肥満を予防しましょう。
アルコールは一時的に尿酸値を上げる作用があります。
また、アルコールが代謝されるときにも尿酸値が上がるので、どんな種類のお酒もできるだけ控えるようにしましょう。
水分を多めに摂取することで尿の量が増えて尿酸が排出されやすくなります。
1日2リットルを目安に、積極的に水分を補給するようにしましょう。
ウォ-キングなどの軽い有酸素運動は尿酸値の上昇を防ぎ、痛風患者さんに多い高血圧などの合併症予防にも有効です。
ただし、運動中に会話ができなくなるほどの激しい運動は痛風発作を引き起こす危険性があるので注意してください。
身心のストレスはどちらも尿酸血を上昇させる要因になります。ストレスを全く無くすことは難しいですが、できるだけストレスをためないように自分に合った解消法を見つけるのがおすすめです。
尿酸値が7mg/dL以下でも、激しい運動をした場合や、もともと関節にたまっていた尿酸結晶に白血球が反応することで痛風発作が起こる可能性があります。
発作が起きたらできるだけ早く病院で治療を受け、その後も尿酸値の管理を続けていくことが大切です。