糖尿病の教育入院のメリットは? 入院期間や費用、保険適用は?

2018/4/26 記事改定日: 2020/8/18
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

糖尿病治療は、退院後に自分で正しく行えるか不安も感じますよね。糖尿病の治療では、通常の入院以外に「教育入院」があります。今回の記事では糖尿病教育入院プログラムの目的や効果、入院期間や基準を紹介します。また、教育入院の費用や保険適用についても見ていきましょう。

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糖尿病の教育入院とは?目的や期間は?

糖尿病の教育入院とは、糖尿病患者さんが糖尿病の基本的な知識を学ぶための入院措置です。教育入院は、下記の目的のもと実施されます。

  • 糖尿病という病気について理解を深める
  • 各種検査を通じて自分の体の状態を知り、どんな治療が必要か理解する
  • 食事療法、運動療法、薬物療法のやり方を身につける(カロリー計算の方法、薬の正しい投与方法など)
  • これまでの生活習慣を振り返り、改善点を把握する
  • 退院後も自己管理できるようにする

教育入院の入院期間は、おおよそ1〜2週間程度です。医療機関によっては、5日程度で終わる短期入院や、週末だけ複数回入院する週末入院を実施しているところもあります。

教育入院ではどんなことをするの?

教育入院では、患者さんが糖尿病について理解を深め、退院後に自己管理できるように、食事療法、運動療法、薬物療法などの方法を身につけることが目的です。
そのため、次のような内容で教育入院が進められることが多いです。

教育入院の内容

検査

教育入院は既に外来の検査などで糖尿病と診断された人に対して行われる治療のため、入院中に新たな検査をするケースは少ないと考えられます。
ただし、食事や薬物療法などの影響で血糖値がどう変化するか評価するため、食後に血糖値を測る検査をすることがあります。

栄養指導

教育入院の大きな目的の一つは栄養指導です。糖尿病の方は食生活が乱れがちであることが多いため、血糖値の上昇を防ぐのような食材やメニューの選び方を医師や管理栄養士などから指導されます。

運動指導

腎症などの重篤な合併症を発症していない限り、血糖値を下げるためには適度な運動をすることが望ましいと考えられています。そのため、教育入院中はそれぞれの体力や体重などを考慮しながら無理なく続けられる有酸素運動中心の運動療法の指導を受けることになります。

運動療法は自己判断で行っても十分な効果が得られないことが多いため、医師や理学療法士などの指導に従って進めていくのが理想的です。

糖尿病の薬について

食事療法や運動療法を行っても血糖値が安定しない場合は、薬物療法を行うことになります。まずは血糖値を下げる効果のある「血糖降下薬」という飲み薬から開始され、十分な効果がない場合は血糖値を下げるホルモンである「インスリン」を自己注射する治療が行われます。

教育入院はインスリン自己注射を導入する方が対象となる医療機関も多く、正しい注射の打ち方や低血糖などの副作用が現れた際の対処法などについても指導が行われます。

フットケア

糖尿病は様々な合併症を引き起こしますが、その中でもよく見られるのが末梢神経障害です。手足のしびれから始まることが多いですが、進行すると痛みなどの感覚も低下していきます。足などにできた小傷み気付かないまま化膿し、壊疽するケースも珍しくありません。

そのため、糖尿病と診断された場合は、巻き爪の予防など「足の状態を常に良好に保つ」ことが必要となります。教育入院中は、このような「フットケア」の方法や注意点などについての指導も行われます。

糖尿病の教育入院の効果は?

糖尿病の教育入院が退院後5年間の血糖コントロールに与える効果を検証した国内の研究によれば、全体(180例)のうち、多くは平均HbA1c値が大幅に悪化することなく7%台を維持できていました

また約44%の患者は平均HbA1c値を6.9%未満に維持できており、体重の増加率やインスリン増加量が少なく、合併症の進行率も低いなど良好な経過を辿ったそうです。

なお、こうした長期的効果を維持できている患者の多くは、過去に糖尿病治療歴がなく、罹病期間が短い傾向にあったことも判明しています。

教育入院に期待できるメリット
  • 平均HbA1c値の大幅な悪化の予防につながる
  • 体重の増加を予防する
  • インスリンの増加を予防する
  • 合併症の進行を予防する

糖尿病の教育入院の基準は?どんな人に必要なの?

教育入院が必要になる基準は、糖尿病の治療薬を服薬しているにもかかわらず、食事療法や運動療法などが実施できておらず、生活習慣に乱れがある患者さんです。
症状の進行や合併症を防ぐためにも、教育入院によって血糖コントロールの方法をしっかり学び、退院後も自宅で実施できるようになる必要があります。

ただ、入院の基準は医療機関によって異なります。上記に該当しなくても、糖尿病についての基本的な知識を学びたい方や、食事や運動療法の具体的な方法を学びたい方でも入院可能なことがあります。

糖尿病の教育入院は保険適用される?費用はいくらかかる?

糖尿病の教育入院も入院の一種のため、保険適用されます。医療機関によって具体的な費用は異なりますが、3割負担の場合は、1週間の入院でおよそ7~10万円支払うのが相場といわれています。

おわりに:教育入院の効果は大!糖尿病への理解を深めて進行を抑えましょう

糖尿病の教育入院は、糖尿病との付き合い方を身につけることが目的です。入院中は食事療法や運動療法の具体的なやり方などをしっかり教えてもらえるため、退院後も血糖コントロールを安定させる効果が期待できます。保険適用内でもあるので、初めて糖尿病と診断された方は、教育入院を検討してみてもいいでしょう。

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