糖尿病は治らないって本当?治療ではどんなことを目指すの?

2018/5/1 記事改定日: 2019/6/18
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

国民病とも言われる糖尿病は「治らない病気」と言われますが、果たしてそれは本当なのでしょうか。もし治らないなら、治療ではどんなことを目標にすればいいのでしょうか。
この記事では、糖尿病の治療の目的と治療内容について解説していきます。

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糖尿病は完全には治らないの?治療の目的は?

糖尿病には、先天的にインスリンの分泌が少ない1型糖尿病と、生活習慣が原因でインスリンの働きが悪くなる2型糖尿病の2種類があります。

1型は先天性であるため、完治は難しいです。基本的にはインスリン療法などを行いながら、一生病気と付き合っていかなければなりません。

2型は、生活習慣を改善しながら治療を行うことで、血糖をコントロールして症状を抑えることができます。しかし、インスリンが効きにくい体質は変える事ができないため、完治するわけではありません。

糖尿病の治療の目的は、血糖を上手にコントロールして「なるべく健康な人と変わらない生活が送れるようになること」ということを理解しておきましょう。

合併症を防ぐ意味

糖尿病は全身の血管に動脈硬化を引き起こし、様々な合併症を発症させます。「3大合併症」として知られているのは、網膜症・腎症・神経障害であり、それぞれ失明、人工透析導入、足切断などのリスクが高まりQOLが著しく低下する原因となります。また、心筋梗塞や脳梗塞、動脈解離など死に直結するような重篤な病気の発症リスクも上昇します。

糖尿病はこれらの合併症が生じるまで自覚症状がないこともあり、発見が遅れることも多々あります。「3大合併症」を発症すると、より厳密な血糖コントロールが必要になり食事制限や運動制限など普通の生活が難しくなることもありますので、重症化を防ぐためにも定期的に健康診断などを受けて早期発見に努め、医師の指示通りに薬物療法や生活習慣改善などを行って血糖をコントロールしていくようにしましょう。

1型糖尿病はどうやって治療する?

1型糖尿病では、インスリン注射が必須です。なぜなら、1型糖尿病はインスリンの分泌そのものが少ないため、外からインスリンを補充しなくてはいけないからです。

インスリン注射には様々な種類があり、人によって量や打つタイミングが違います。インスリンが不足することは命に関わりますので、主治医の指示に従い、インスリン治療が滞らないようにしましょう。

食事や運動の注意点

1型糖尿病の場合、食事に制限はありません。基本的には何を食べても大丈夫です。人によって生活のスタイルやインスリン治療の内容が違うので、日頃の食事については主治医や管理栄養士と相談しておくと良いでしょう。ただし、肥満の方はまず適正体重に近づけるような食事療法を行わなくてはいけません。

また、食後の血糖値の上昇には、炭水化物の摂取量が大きく影響しています。そのため、炭水化物の量に合わせてインスリンの量を調節したり、インスリンの量に合わせて炭水化物の量を調節する方法もあります。

運動については、重い合併症がなく状態が落ち着いていれば制限はありません。1型糖尿病の人の中には、プロの野球選手やサッカー選手として活躍している人もいるほどです。運動する際には、事前におにぎりなどの補食を摂ったり、運動前後のインスリンの量を減らすなどの調整が必要です。どのような方法がいいかは人によって異なるので、主治医に確認しましょう。

2型糖尿病はどうやって治療する?

2型糖尿病では、まず食事療法と運動療法を行います。血糖値を見て状態に応じ薬を使います。

食事療法では、適正なエネルギー量で栄養バランスの良い食事を心がけましょう。エネルギーの適正量は、年齢や性別、日々の生活状況によっても変わるので、主治医や管理栄養士に相談してください。

運動療法も大切な治療の1つです。筋肉量が増えると体に取り込む糖の量が増え、脂肪が減少すると血糖値を下げるインスリンが力を発揮しやすくなります。
ただ、急に過激な運動をすると、体に負担もかかりますし長続きしにくいです。自分にあった運動量や長続きさせるコツなどは主治医に相談しましょう。

食事の見直しや運動を行っても、思ったような効果が得られない場合には、薬物療法を行います。初めはその人の状態にあった飲み薬で調整をしていきます。
飲み薬では効果が得られない場合やインスリンの分泌量が少ない状態の場合には、インスリン注射が検討されることがあります。

おわりに:糖尿病の治療の目的は「上手につきあっていくこと

糖尿病は完治する病気ではありません。しかし、薬を上手に使ったり、食事の改善や運動習慣をつけることで、血糖値が安定した生活を送ることができます。
普段からバランスの良い食事と適度な運動を行えば、糖尿病でも健康な人と変わりない生活を送ることができることでしょう。

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